3. 意思決定を一元化したくなる衝動に抗う

 サプライチェーンをモニタリングし、混乱に対応する高度なシステムの開発が進むにつれて、レジリエンス戦略を統括するチームに意思決定権を集約しようとする流れが強まるケースが多い。しかし現実には、一元化によって、受け入れがたい対応の遅れが生じる可能性がある。

 より望ましいのは、意思決定の一元化と分散化のバランスを取るアプローチだ。ある自動車関連企業の場合、戦術的または単純な意思決定については日々のサプライチェーン業務に携わる現場の従業員の手に委ねる一方、大規模な投資や自社のサプライチェーン全体に関わる大きな意思決定は中央のサプライチェーン・レジリエンスチームが担当する、というハイブリッドモデルを採用している。

 たとえば、在庫管理方法に関する具体的な変更を行う権限は調達担当チームが担い、自社のサプライチェーン全体に関わる優先リスクと対応策のランク付けといった戦略的な決定は中央のチームが行う。この体制によって、同社はタイムリーな問題により迅速に対応しつつ、多大な影響をもたらす変更には適切な配慮ができると考えている。

4. 重要なリソース供給を確保する現実的な方法を明らかにする

 最も重要な材料や部品を確実に確保するために、企業はさまざまな選択肢を確保している。最も一般的なソリューションとして挙げられるのは、サプライヤーにプレミアム価格を支払って確保する、複数のサプライヤーから部品や材料を調達する、より幅広く入手可能で、専門性の低い代替物を活用した最終製品を再設計する、自社製品を横断する形で部品の標準化を進める、製造能力の向上に向けてサプライヤーと共同出資を行う、といった方法だ。

 ただし、稀少性の高い部品や材料については、そうした選択肢を取ることが不可能だったり、完全には問題を解決できなかったりする可能性がある。経営陣は貴重なリソースの生産の内製化や、稀少な鉱物の場合は自社での採掘まで検討したくなるかもしれない。しかし、直接的な生産や調達を引き受けるのはコストが高く、コアビジネスから資金を吸い上げて会社の業績を悪化させるおそれがある。

 代替策として、稀少なリソースの有効活用につながる循環型のビジネスモデルを模索する企業もある。

 たとえば、トヨタ自動車は日本で電気自動車を販売する代わりにリースすることで、バッテリーの所有権を持ち続けることができ、おかげで適切なリユースや主要材料のリサイクルを進められる。このモデルは、リスクとコストを削減し、電気自動車向けバッテリーの製造に必要な金属の不足を回避し、トヨタ車の環境面での持続可能性を高められると期待される。