サプライチェーンの混乱を乗り切る5つのアクション
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サマリー:完璧なレジリエンスを備えたサプライチェーンを実現したいと考える経営者は、少なくない。しかし、その実現はほぼ不可能である。そこで、多くの自動車メーカーが採用しているのが、現実的なアプローチによって、さま... もっと見るざまな問題に適応する方法だ。本稿では、自動車業界の事例を参考にしながら、経営者が自社に適したレジリエンス戦略を構築するために、検討すべき5つのアクションを紹介する。 閉じる

完璧なレジリエンスの構築は不可能

 サプライチェーンが混乱に陥る頻度が増え、その規模も拡大し続けている。同じような混乱が二度と起きないよう、どのような犠牲を払ってでも、あらゆる欠陥や過ちをなくしたいというビジネスリーダーの本能的な反応は理解できる。

 しかし、完璧なレジリエンスを備えたサプライチェーンの実現は、不可能であることが明らかになってきている。むしろ現実主義的になり、適応性を持つことのほうが、はるかに効果的であると証明されている。

 多くの自動車メーカーが採用しているのも、こうしたアプローチだ。あらゆる業界の企業がレジリエンス向上のため、サプライチェーンの方針転換を進めるなか、自動車業界が近年のサプライチェーン・ショックの際に取った戦略的手法は、すべての企業にとって教訓となっている。

 本稿では、経営者が自社に適したレジリエンス戦略を構築するために、検討すべき 5つのアクションを紹介しよう。

1. 「それなりによい」製品を提供する

 自動車メーカーの中には、必要不可欠ではない機能や部品を調整したり、なくしたりすることで出荷の遅れを回避している企業がある。彼らの見方によると、ここ数年の供給関連のトラブルを経て、顧客はほしい物すべてがそろっていない製品でも喜んで受け入れるようになっているという。

 ゼネラルモーターズをはじめとする自動車メーカーは、入手不可能な半導体を必要とするドライバー・アシスタンス・システムなどの機能をなくした。半導体不足が解消されつつあるいま、自動車メーカーがどのタイミングで判断を覆すのかは、未知数だ。

 たとえば、アナログの操作パネルがデジタルの物よりも安価で、しかも顧客がアナログでも構わないと考えているとしたら、デジタルに戻す意味はあるのだろうか。企業は、顧客の好みや競争環境、供給能力についてよく考えることで、短期的、長期的の両面で正しい答えを導き出せるだろう。

2. より優れたモニタリングシステムを開発する

 不安定で不確実ないまの時代、経営者は自社の予測能力アップに向けて、膨大な資金を投入すれば、サプライチェーンのレジリエンスを上げるために努力すべき点が明らかになり、自信を持って長期的な賭けに出られると感じているかもしれない。だが、この数年間から得られる教訓があるとすれば、それはどれほど洗練された予測モデルもすべてを予測することはできないということだ。

 そこで一部の企業は、予測のために過剰な投資を行う代わりに、サプライチェーン内で特に重要な工程のつながりをモニタリングし、潜在的な課題にリアルタイムで警鐘を鳴らすシステムを構築している。さらに、そうした新しい情報への対応を加速させる方法も模索している。

 これを実現するためには、組織のマインドセットの変更が必要で、一時的な問題ではなく、アジリティと適応性の向上を重視すべきだ。