
「人間のエネルギー危機」の蔓延
筆者の一人であるカルッチのクライアント、ケルシーは大手食品メーカーの事業部門でゼネラルマネジャーを務めている。彼女は最近、次のように言った。
「うちのチームのメンバーは皆、いつも疲れているように見えるのです。調子はどうかと聞けば、『いいですよ』と答えます。メンバーから休みを取りたいと言われれば、私はいつでも許可しています。皆、仕事はこなすのですが、どこかぼんやりしているように見えます。私はいったい、どうすればよいのでしょう」
ケルシーの会社も業界も、この不安定な2年間で大きな打撃を受けた。その結果、離職者が増え、サプライチェーンが混乱し、柔軟な働き方に対する従業員の期待が変わり、時間的な制約に働き手の心身は消耗した。それが、現在の「人間のエネルギー危機」の蔓延につながっている。そして、これはケルシーだけの話ではない。
世界中で虚脱感が増し、サージキャパシティ(有事即応能力)が使い果たされ、メンタルヘルスは危機的状態にある。ギャラップの調査では、世界で10人中7人が自分は苦しい闘いをしている、または苦痛を感じていると答えている。
世界の数万人の従業員を対象としたマイクロソフトの調査報告書「ワーク・トレンド・インデックス」によると、世界中の働き手が新しい「価値」の方程式を持っているという。回答者の53%、特に子どもがいる人(55%)と女性(56%)は、以前に比べて仕事よりも健康やウェルビーイングを優先することが多くなったと答えている。
その傾向は行動にも現れている。2021年、退職の理由として最も多く挙げられたのは、個人的なウェルビーイングまたはメンタルヘルスの問題だった。
たしかに、「大退職時代」(グレート・レジグネーション)は一部の人にとって、人生のコントロール感を取り戻したり、ウェルビーイングの問題に取り組んだりするための応急処置にはなったかもしれない。だが、ほどなくして「大後悔時代」(グレート・リグレット)に取って代わられた。つまり、誰もが仕事を続けたいと思っているが、自分の健康や幸福全般を犠牲にしてまで働きたくはないということだ。
実は、仕事自体は必ずしもエネルギーを消耗するものではなく、仕事量は一般に考えられているほどエネルギーの消耗とは関係ない。エネルギーを奪うものとは、意味のない仕事、有害な上司や同僚とのやり取りに備えたり、切り抜けたりするのに要する認知的負荷、あるいは家族のウェルビーイングと仕事の要求をめぐって強いられる、不可能と思えるトレードオフなのである。
米国の公衆衛生局長官は最近、職場のメンタルヘルスとウェルビーイングに関する新しい枠組みを発表した。その所見から、ウェルビーイングを大切にしながら健全な職場環境を形成するために必要な条件が、これまで理解されていたよりもホリスティック(全体論的)であることがわかる。
あなたのチームが本来持っているはずの、あるいはかつて持っていた力強いエネルギーを発揮していないならば、エネルギーを補充することが欠かせない。そのために活用できる、再生可能エネルギーのリソースを以下に紹介しよう。