カリスマリーダーは万能なリーダーではない
Dave Nagel/Getty Images
サマリー:カリスマリーダー、あるいはスーパーヒーローのように扱われるリーダーは、魅力的な人格やパワーを持っている。しかし必ずしもリーダーとして万能であるわけではない。本稿では、イーロン・マスクなどをケースに、ヒ... もっと見るーローのように扱われるリーダーに対し、短絡的な評価を下すことに警鐘を鳴らす。同時にリーダーを正しく評価するときに必要な3つの要因を提示する。 閉じる

良好な経営か、見極めるための3つの側面

 経営学の研究者にとって、2022年11月の数週間は、試練の時だった。暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングの経営破綻は、信じられないような管理欠如が原因であり、破産手続きの世話役を任されたエグゼクティブは、粉飾決算を発端に経営破綻したエンロンよりもひどいと言っていた。

 イーロン・マスクのツイッター買収も、大混乱を巻き起こした人員削減から、無謀なプロダクトローンチの発表と撤回、さらにはマスクの絶え間ないツイートまで、いらいらするようなことの連続だ。

 さらには、血液検査会社セラノスの詐欺問題で、CEOだったエリザベス・ホームズに11年の実刑判決が下された。

 この種のスキャンダルには、共通点が一つある。ユニークで華やかなリーダーシップと、現実の経営業務のはなはだしい軽視が組み合わさっているのだ。

 FTXの問題点は数え上げるときりがないが、ブルームバーグのコラムニストであるマット・レビーンが指摘したように、その中心にあるのは、モニタリングと会計業務の完全な欠如だ。会計は、『フォーチュン』誌の表紙を飾るような、はなばなしい仕事ではない。しかし、会社の活動や財務の適切なモニタリングは、良好な経営の中核を成すものだ。

 FTXではそれが無視されていたようである。基本的な経営メカニズムもないのに、なぜあれほど成長できたのか。悲しいことに、おそらく投資家や顧客は、この会社が「ユニーク」な経営陣のカリスマ性とビジョンによって、きちんと運営されていると思い込んでいた。

 ツイッターの騒動はいちだんと興味深いものだ。マスクの無数のツイートと、プロダクトローンチの発表と撤回、大規模な人員削減とその後の雇い戻し、リモートワークの禁止発表と24時間以内の撤回などが次々と起こった。

 ここでもCEOが、経営の基本を無視し、自らのリーダーシップと知性に魔法のような効果があると信じている。マスクに買収されたツイッターは、基本的な人事へのリスペクトもほとんどないようだ。マスクは従業員のモチベーションを高めたり、人材流出を防ぐことに苦労している。本当に退職を奨励したいのかはさておき、数々のコメントはマスクが残したいと思う多くのスタッフまでも退職を選択する要因になった。

 これらの企業から私たちは何を学べるのだろうか。FTXもツイッターも問題は続いているが、これまでのところ両社とも、「スーパーヒーロー」のような経営者の存在は、退屈な経営業務に勝ると思い込み、その犠牲になったようだ。

 少なくとも2つの点でこの思い込みは間違っている。

 第1に、退屈な経営業務は重要なものであり、これに真剣に取り組む企業は、競争優位を構築することができるという明確な証拠がある。筆者のチームの研究によれば、経営慣行は業界や国によって異なり、良好な経営をしている企業は、そうでない企業よりも、優れた業績を挙げている。その後の実験調査でも、良好な経営は業績の改善につながることが確認されている。

 では、良好な経営とは何か。

 これについて、唯一の包括的な答えは存在しない。しかし、筆者のチームは、「目標設定」「インセンティブ」「モニタリング」という3つの側面に着目した。良好な経営がなされている企業は、合理的で戦略的な目標を設定し、従業員がその目標に貢献できるようにし、その進捗を測定する。これを退屈と呼ぶのは自由だが、筆者は「良好なビジネス」と呼びたい。