企業はどうすればよいのか

 では、企業はデータ品質の引き上げをどのように実現すべきなのか。データ品質の低さに伴う負担を、単なる業務上のコストの一部として受け入れる企業があまりに多いことに筆者は気付いている。だが、それは純然たる無駄である。リーダーは改善の機会を認識して行動を起こす必要があるのだ。

 第1に、従業員に意義を認識させて問題を理解させるための、最も適切な言葉を用いるべきだ。本記事では「負担」や「コスト」を使っているが、「付加価値のない作業」「隠れたデータ工場」「機会」なども人々の心に響くかもしれない。

 第2に、自社のデータ品質の特徴を明らかにしよう。その方法として、前述した「フライデーアフタヌーン・メソッド」を用いて、すべての部門、職能、任務においてデータ品質を測定するとよい。

 第3に、データ品質に伴う負担の発生源に、徹底的に対処しよう。最善かつ最速の方法は、最初からデータを正しく作成することである。つまり、欠陥の根本原因を排除するのだ。企業におけるこの取り組みを筆者は非常に長きにわたって支援してきたが、圧倒的によく見られる根本原因が2つある。

1. データの作成者は、他者がそのデータに何らかの要件を求めているという事実を単に知らない。

2. データの利用者(質の低いデータによって被害を受ける側)は、データを修正するという行動を反射的に起こし、意図せず負担の増加を招いている。

 両方とも比較的容易に解決できる。データ利用者は、作成者を探し出して、自分が求める品質要件を説明する習慣を身に付ける必要がある。データ作成者も同様に、利用者側の要件を理解し、それらを満たせない根本原因を見つけて排除しなければならない。もしこれが「古いやり方」による品質管理のように思えるのであれば、その通りである。何より肝心なのは、これが驚くほど効果的であることだ。

 最後に、「データ品質に対する取り組みなんて退屈だ」という話は無視しよう。なぜなら、それは真実ではないからだ。筆者の経験では、ほとんどの人はデータ作成者およびデータ利用者としての新たな役割を好み、データにまつわるありふれた問題に費やす時間が減ることを間違いなくありがたいと感じる。

 まずは、考え方が柔軟なマネジャーがいる場所から着手し、6カ月で欠陥率を半分に減らすという初期目標を立てるとよい。従業員に研修を実施し、1つか2つの改善を行うために支援し、その後は自由にやらせよう。次の場所に移って取り組みを進めながら、勢いを付けていけばよい。

 生産性は必ずしも停滞するものではなく、むしろ停滞してはならない。多くの人は生産性と品質の関連性を直観的に理解しにくいが、そこには膨大な機会が存在する。質の低いデータは生産性に直結するのだ。いまこそ排除すべきである。


"Bad Data Is Sapping Your Team’s Productivity," HBR.org, November 30, 2022.