雇用主は従業員をどのようにサポートできるか
記録的なインフレの中で、雇用主は、従業員が積極的に健康行動に取り組むことを奨励し、既存のリソースがあるなら、それを思い出させる必要がある。
調査によると、従業員は、自己負担ゼロの予防医療(健康診断やインフルエンザ予防接種など)をはじめとする福利厚生を忘れているか、その内容をまったく知らない傾向がある。2012年、『ヘルス・アフェアーズ』誌がカリフォルニア州で消費者向け医療保険に加入している人に行った調査によると、「自分が契約している保険で、予防的な診察や検査が費用免除の対象になっていることを知っている人は20%以下だった」という。
この問題は、その後10年間も続いていた。法人向けに福利厚生を提供するマエストロ・ヘルスが2019年に行った調査によると、従業員の35%が「自分の医療保険の適用範囲を、少しだけ理解しているか、理解していないか、何も知らない」とする一方、62%が「雇用主が医療に関する疑問に答えるリソースとして機能していないと感じている」ことがわかった。雇用主たちは、従業員のために最善を尽くす責任があるし、パートナーと協力して福利厚生をさらに理解しやすく、さらに利用しやすくする責任がある。
残念ながら、インフレは短期的ではなく、長期にわたり生活費を上昇させるおそれがある。したがって準備が重要だ。ふだんの行動に着目し、健全な行動によって健康を取り戻す「ビヘイビオラルヘルス」における小さな変化が、プラスの経済効果をもたらす可能性がある。医療費が高く付く慢性疾患を持つ多くの人々にとって、これは特に重要だ。たとえば糖尿病患者の場合、年間の医療費は平均1万6750ドルにもなる。
また、投資利益率(ROI)の高いヘルスケアソリューションを積極的に実行することは、その助けになるだろう。遠隔医療もその一つだ。遠隔医療業者は、糖尿病や高血圧症、筋骨格系の問題、メンタルヘルスなど、さまざまな症状の管理を支援するプログラムを提供している。雇用主にとって遠隔医療のROIは、従業員の病欠の減少や、より健康的な企業文化の育成、医療費の明らかな節減まで多岐にわたる。こうしたプログラムは従業員定着率の上昇にもつながる。ピュー・リサーチ・センターの調査によると、良好な福利厚生がないために転職を決めた人は43%にも上る。
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インフレ率が高止まりする中、米国人にとって、医療に関する厳しい選択は始まったばかりかもしれない。雇用主はこうした現実を戦略的プランニングに組み入れ、従業員が健康問題への対処を先延ばしにすると何が起こるかを積極的に考えるとともに、従業員が今後直面する問題を少しでも軽減できるよう支援する必要がある。
"When Inflation Rises, Health Outcomes Fall," HBR.org, November 29, 2022.






