ささやかな勇気を奮い起こす経験を重ねて
大きな効果につなげる

 勇敢なマインドセットを育むには、ささやかな勇気を奮い起こす経験を重ねることが欠かせない。一見すると些細なことでも、勇気を奮い起こして行動することを繰り返すうちに、次第に大きな影響が生まれて、やがては大きな恩恵を得られるのだ。

 有力慈善団体メディア・トラストのスー=メイ・トンプソンCEOは次のように述べている。「重要なのは、大きなリスクを伴う行動をいくつか取ることではなく、自分自身を日々、コンフォートゾーンの外に押し出すことです」

 リーナ・ナイールは、ユニリーバで働き始めた時、自分以外に女性がほとんどいない場で意見を述べることに、気後れすることがしばしばあった。そこで、ささやかな勇気を奮い起こして行動するように、自分の背中を押すための方法を考案した。

「いつも小さなノートを持ち歩き、自分が発言した時は、そのノートに星印を描くようにしました」と、ロンドンにあるユニリーバのグローバル本社で筆者と話した時、彼女は語った。「5回発言したら、星を5つ描く。発言に対する反響が大きかった時は、1度に星を2つ描くものとしていました。そうすることで、しっかり発言するという覚悟を守ることができました」

 こうしたささやかな行動の積み重ねは、長期的に大きな恩恵をもたらした。ナイールは、ユニリーバで女性初、アジア系初、そして史上最年少の最高人事責任者(CHRO)になり、さらにはシャネルに移籍してCEOに就任した。

 勇気ある行動は、次の勇気ある行動を生む。勇気は筋肉と同じで、使えば使うほど強くなる。どれだけささやかな行動でも、そのような効果があるのだ。

仕事以外の場でも、勇気を奮い起こす練習をする

 仕事の場で勇気を奮うことに、不安を感じることはないだろうか。そうであれば、まずは仕事以外の場で、勇気を奮い起こして行動することから始める。勇気とは、人生のさまざまな領域に持ち運べるマインドセットだ。つまり、そうしたマインドセットを身に付けることができれば、人生のあらゆる領域で通用する。

 筆者が共に仕事をしたことがある女性の一人は、週1回は、初めての相手と食事やデートに行くという目標を立てた。そうすることによって、新しく暮らし始めた街で、友人や恋人候補を増やし、さらにはネットワークを広げたいと考えたのである。

 ほかにも、コンフォートゾーンの外に踏み出して、それまで避けていたスポーツジムに通ってみたり、フィットネスのクラスに参加してみたりするのもよいだろう。あるいは、相手の意向に従うばかりでなく、もっと「ノー」と言い、自分の時間を大切にしようと決めることもできる。

 DEI(ダイバーシティ〈多様性〉、エクイティ〈公平性〉、インクルージョン〈包摂〉)担当エグゼクティブのカレン・ブラウンは、私生活でコンフォートゾーンの外に出るために「常に新しいことを学ぼうとしています」と話してくれた。「特に、それまで自分に馴染みのなかったことを学習するのです。それは、まったく異なる文化の国を旅することだったり、何かのイベントに参加することだったり、専門分野以外のコンテンツを読んだり聞いたりすることだったりします」