明日また挑戦する
エリザベス・オデイ博士は、高精度の病理診断技術を開発するオラリスの創業者だ。オデイが勇気を奮って行動するために実践している戦略は、たとえ順調に進まないことがあったとしても、コンフォートゾーンの外に出て行動することを毎日心がけるというものだ。
現在30代のオデイは、オラリスのCEOに加えて、世界経済フォーラムの「バイオテクノロジーに関するグローバル・フューチャー・カウンシル」の共同座長、『サイエンティフィック・アメリカン』誌の「エマージングテクノロジー トップ10」の選考委員も務めている。しかし、このような輝かしい経歴を見ただけでは、彼女がこれまで乗り越えてきた試練の全体像は見えてこない。
「バイオテクノロジー業界の若い女性科学者兼CEOとして、日々、試練にぶつかります。そうした試練に向き合うには、多くの勇気が必要です」と、オデイは述べた。オラリスがスタートアップ段階にあった時には、「馬鹿げた質問や、時には侮辱的な質問」をしてくる投資家に遭遇することが多かったという。彼女の専門知識や実績に疑問を投げかける投資家もいたというのだ。
「数式を示したり、いくつもの代謝経路を挙げて、それらと病気の関係を説明したりするように求められた時、私はいつも間違いのない回答を返しました。にもかかわらず、それが投資につながったことはほとんどありません。男性の起業家は、私よりデータがはるかに少なくても、同じだけの学位を持っていなくても、投資を受けていました」
数多くの研究が明らかにしているように、オデイと同様の経験をしている女性は多い。男性に比べて、より厳しい視線を向けられ、疑念を生むような言葉を投げかけられることが多いのだ。
オデイは常に自信を持っているのかといえば、そんなことはない。彼女は次のように述べている。「よく思い出すのは、作家のメアリー・アン・ラドマッハーの言葉です。『勇気とは、いつも大声を張り上げるようなものとは限らない。明日また挑戦しようという決意を、静かな声で語る場合もある』という言葉です」
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フランス出身で11歳の時に米国へ移住した20世紀の日記作家、アナイス・ニンは次のような言葉を残している。「人生は、その人の勇気の大きさに応じて、拡大もすれば縮小もする」
あなたのキャリアにも、同じことがいえる。自信という手に入らない感情を見つけようと努力するのではなく、勇気を奮い起こして思い切った行動を取ることを目指そう。
"Choose Courage Over Confidence," HBR.org, December 08, 2022.