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リーダーが公然と批判される時代に
筆者のクライアントで、金融サービス機関のCEOだったデニスは数年前、エグゼクティブチームの会議に現れると、こう言い放った。「ほかに(批判の)矢を投げたい人はいるか。今週の矢の的は私のようだからね」
その前の週、彼の会社の下級幹部が倫理規定違反で解雇された。そのため、誠実さを売りにしていた会社の評判に大きなキズがついた。従業員らは、この事件にショックと怒りを覚え、SNSやメール、社内プラットフォームで、トップのデニスをターゲットに非難を浴びせた。彼が「そうなる(下級幹部が倫理規定違反を起こす)のを許容した」もしくは「(事件を)見て見ぬ振りをした」というわけだ。だが、どちらも真実ではなかった。
従業員から公然と非難された経験があるリーダーは、デニス一人ではないだろう。この数年で、従業員アクティビズムが台頭し、リーダーは公然と批判されるようになった。イーロン・マスクがツイッターの経営をめぐって各方面から批判を浴びたのは、極端な例かもしれないが、いまは従業員や世間から瞬く間に叱責の矢が飛んでくる時代であり、リーダーはその格好の餌食となるのである。
先日、すでに引退したデニスと会う機会があった。そこで、激しい批判にさらされていた時の経験を振り返ってもらい、いまなら異なる対応をしたと思うかと尋ねた。もしあなたがいま、リーダーとして従業員から厳しい批判を受けているなら、覚悟を決めて適切に対処する方法を、本稿から知ることができる。また、たとえいまはそうでないという人も、次は自分の番かもしれないと想定しておくのが賢明だろう。
仕事の一部として受け入れる
リーダーシップを発揮する立場になったら、あなたの行動は常に巨大ディスプレイに映し出され、すべての人がそれを見て評価を下していると考えるとよい。地位が高くなるほど、より広範囲の人々の目にさらされるのだ。
時には、あなたが判断を誤ることもあるだろう。毎週、膨大な数の意思決定を下していれば、必ず誰かを失望させたり怒らせたりするケースも出てくる。
自分が行った選択の結果を長期的に見ていくことが大切だ。マイナスよりプラスの結果のほうが多ければ、理想的である。たった一つの選択やそれに対する世間の反応に、囚われてはいけない。自信を失って、過剰な警戒心や馬鹿にされたくない気持ちがその後の決断を左右するようになると、かえって事態は悪化する。
公平さを尺度にした反応はしない
「もし物事に公平さを求めるなら、この立場に立つべきではありません」とデニスは言う。失敗を犯した時、リーダーは過剰に非難を受ける。それがリーダーであることの残酷な現実なのである。
あなたが間違いを犯すと、組織の広い範囲で責任の追及が過熱する。だが、問題から遠い人ほど文脈を把握しきれておらず、問題への理解も乏しい。そこで、それぞれに憶測や自身のトラウマを投影し、自分に理解できる範囲内であなたの言動の動機を認識し、空白を埋めようとする。
こうした雑音がどれほど胸に刺さっても、横道に逸れてはいけない。問題を解決し、被害を受けた人に対応し、出来事から学ぶことに集中しよう。