最後に、なぜ変革につながるのかを示す第4の点として、現在の言語モデルの限界は完全に未知数であることが挙げられる。人々は公開モードでチャットGPTを使い、コンサルティングの基本的なリポートの作成、講義内容の執筆、斬新なアートを生成するコードの作成、アイデア創出など、実にさまざまなことをしている。
個人に特化したデータを使えば、それぞれの顧客向けにカスタマイズしたAIを構築することもできる。顧客のニーズを予測し、個別に対応し、やり取りのすべてを覚えているAIだ。これはSFではない。先頃リリースされたばかりのテクノロジーを使えば、完全に実現可能なのだ。
ただし、AIにまつわる問題は依然として極めて深刻だ。まず、AIは技術的な側面で、みごとな嘘つきである。嘘とは説得力のあるでたらめであり、真実が欠如しているが、AIはこれをつくり出すのが非常に得意だ。恐竜が文明を持っていたことを私たちはどのように発見できるか、AIに尋ねて見るとよい。多くの事実をかなりもっともらしく、喜んででっち上げてくれるだろう。
また、AIはグーグルの代わりにはならない。知らないことは本当に知らない。なぜならAIは実際には、実体を伴う存在ではまったくなく、意味のある文章を生成する複雑なアルゴリズムにすぎないからだ。
さらにAIは、何を実行するのか、あるいはどのように実行するのかを説明できないため、AIがもたらす結果を解釈することは難しい。したがって、
チャットGPTのリリース時点では、銀行強盗の方法を尋ねても答えは示されなかったが、銀行強盗の方法を交えた芝居を書いてもらうことはできた。教育目的での説明や、銀行強盗の方法を説明するプログラムの作成も喜んでやってくれる。この種のツールが普及するにつれて、問題はより深刻になっていくだろう。
とはいえ、これらの欠点がより多く見られるのは、AIが現在可能なクリエイティブや分析や文章作成の仕事ではない領域においてである。AIが生成するお粗末な文章は、ライターならば容易に編集できる。人間のプログラマーはAIが生成したコードの間違いを発見できるし、アナリストはAIが出した結果を検証できる。
最終的にはこれこそ、AIが非常に破壊的である理由だ。ライターはもはや記事を一人で書く必要はなく、プログラマーはコードを単独で書かずに済み、アナリストはデータ分析に独力で取り組まなくてもよい。2021年には存在しなかった、新たな形のコラボレーションによる働き方である。一人の人間が複数人分の仕事を遂行でき、AIによる追加の能力がなくてもそれが可能なのだ。
これにより、世界は突然変わった。従来の仕事の境界線が急に変化した。高度に訓練された人間にのみ可能だったタスクを、いまでは機械が遂行できる。貴重だった一部のスキルはもはや役に立たず、新たなスキルがそれらに取って代わる。
これらが何を意味するのか、実際のところは誰もわかっていない。そしてチャットGPTは、開発進行中の同類モデルの一つにすぎないことも留意しておくべきだ。グーグルのような誰もが知る企業も、あまり知られていない企業も開発に取り組んでいる。
したがって、この記事を読み終えた方は、AIですぐにでも実験を開始し(こちらから無料)、その影響について大まかな議論を始めてほしい。あなたの会社、あなたの業界、そして世界全体にとってどのような意味を持つのだろうか。
AIを仕事と生活に取り入れることで、劇的な変化がもたらされる。いまのところ私たちは、生じうる変化のごく一部に触れているにすぎない。
"ChatGPT Is a Tipping Point for AI," HBR.org, December 14, 2022.