
2022年11月30日、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR) マネジメントフォーラム「データ経営の実践~DXを実現する人材・組織能力の向上~」(主催:ダイヤモンド社 ビジネスメディア局)が開催された。同日の基調講演と特別対談から、企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)実現に必要不可欠な人材・組織マネジメントの在り方を探る。
実を結ぶDXに必要なものとは
多くの企業がDXの実現に向け、いま動き出していることだろう。しかしDX推進への投資が必ずしも業績向上につながっていると言い切れないのが現状のようだ。
実を結ぶDXに必要なものとは何か。本イベントでは、安川電機代表取締役会長兼社長の小笠原 浩氏による基調講演「安川電機が目指すDXの方向性」と、ヤマト運輸執行役員(DX推進担当)の中林紀彦氏を招いた特別対談「社員全員のデジタルリテラシーをどう向上させるか」にて、DX推進のための人材戦略にフォーカスした。
このほか協賛講演では、協賛企業による講演が企画され、最新の成功事例が共有された。
1.「データドリブンマネジメントによる企業価値の向上~予測型経営に向けたチャレンジ~」 (富士通 財務経理本部経理部長益田良夫氏、Ridgelinez Business Science Principal野村昌弘氏、同社Senior Manager大塚恭平氏)
2.「データ経営実践のフレームワーク」(NTTデータ 法人コンサルティング&マーケティング事業部統括部長プリンシパル・コンサルタント コンサルティング&アセットビジネス変革本部兼務新田 龍氏)
3.「DX⼈材・組織づくりに必要なこと データ分析民主化の視点から」(アルテリックス・ジャパンセールスエンジニア責任者曽我部祥宏氏)
4. 「実践的なデータ経営とは? 先進他社が陥った代表的な失敗例から学ぶ」(Liberty Nation(運営会社:Curiositas)代表取締役佐藤辰勇氏)
メカトロニクスで社会に新たな付加価値を
安川電機が目指すDXの方向性
基調講演「安川電機が目指すDXの方向性」の講演者は、安川電機 代表取締役会長兼社長の小笠原 浩氏。
福岡県北九州市に本社を置く同社は、産業用ロボットなど「メカトロニクスソリューション」を提供する。メカトロニクスとは「機械工学・電気工学・情報工学が融合した工学」のこと。機械システムの自動化・複雑かつ高度なシステム制御を実現するソリューションを指す。1969年、同社技術者の森徹郎が考案した概念だ。
現在、同社の事業は国内外に広く展開されており、事業領域も産業機械・ロボットに使われる「モーションコントロール」から、「ロボット」「システムエンジニアリング」まで多岐にわたる。他方、かねてより3つのi(Integrated=統合的、Intelligent=知能的、Innovative=革新的)を組み合わせたソリューションコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を打ち出すなど、スマートファクトリーの実現にも余念がない。
2015年4月、安川電機は長期経営計画(2016〜25年度)「2025年ビジョン」を策定した。「コア事業の進化により、お客さまの経営課題の解決に寄与するとともに、メカトロニクス技術を応用した新規分野の拡大により、社会に新たな付加価値を生み出す」——。そんな同ビジョンの実現に向け、現在までに2016〜18年度の中期経営計画「Dash 25」、2019~21年度の中期経営計画「Challenge 25」、そして「Challenge 25」の最終年度を1年延長した2019〜22年度中期経営計画「Challenge 25 Plus」が進められている。
当然のことながら「DX推進」は計画実現に欠かせない重要なピースであるが、小笠原氏は現在進行中の安川電機によるDX、通称「YASKAWAデジタルトランスフォーメーション(YDX)」の大部分は、「まずは業務効率化達成のため」だと強調した。