日本の製造業DXが進むべきは「5Sの徹底に立ち返る」

 小笠原氏は、昨今国を挙げて進められている日本のDXについて「経済産業省『DXレポート』をすべて否定するつもりはない」としながらも、「(DXは)すべてを最新のものへ置き換える必要はない」「メインとなるシステムなどはともかく、使えるものは徹底して使うことをまず考えるのがベスト」とし、「他人事にしてはいけない」と自前のDXを推奨した。

「世の中のDXに惑わされてはいけません。もともとDXとは『デジタル技術によって人々の生活(業務)を変革する』こと。ITベンダーやコンサルとDX推進するのもよいかもしれませんが、彼らのビジネスでは、企業が取り組みに時間をかければかけるほど利益が出ます。必ずしも利害が一致するとは限らないと、常に認識しなければいけません。またDXを進めればいろいろな成果が出てきますが、投資金額と成果に相関関係はありません。お金をかければかえるほど悪くなることもあります」(小笠原氏)

 日本の国際競争力が、国際的なサーベイで軒並み低迷する現状を指し、「仕事の標準化・データの共通化を基本に働き方改革をしていくことが大切」だとする小笠原氏。

「10数年前、私は『日本のM&A成功確率が欧米に比べ非常に低い』と感じましたが、それは欧米では仕事が標準化されてデータがすでに統一されていたから。買収側のIT化に合わせれば双方のメリットになるので、M&Aのニーズも高かったわけです。また日本の場合は中小企業に体力がなく、そのため設備投資ができない。労働生産性もなかなか上がりにくいのが現実です。DXは、中小企業を含め巻き込んでいかなければならない取り組みだと感じています」(小笠原氏)

 その上で、小笠原氏は製造業DXが踏み出すべき第一歩目を「製造業の基本=5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)に立ち返るべし」と進言した。