事業戦略とデータ戦略を「縦横に編み込む」
ヤマト運輸のDX
特別対談「社員全員のデジタルリテラシーをどう向上させるか」では、ヤマト運輸株式会社執行役員(DX推進担当)の中林紀彦氏が登壇し、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)編集長の小島健志が、同社の社員全員のデジタルリテラシー向上に向けた人材・組織のマネジメントに迫った。
中林氏は、日本アイ・ビー・エムではデータサイエンティスト、オプトホールディングではデータサイエンスラボ副所長、SOMPOホールディングスではチーフ・データサイエンティストなどを歴任。2019年8月にヤマトホールディングス株式会社へ入社し、2021年4月からヤマト運輸株式会社執行役員に就任し、同社のDX推進の舵を取る。
ヤマト運輸株式会社を傘下にもつヤマトホールディングス株式会社は、2020年1月に経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を発表した。この経営構造改革プランは、お客様や社会のニーズに応える新たな物流のエコシステムを創出することで、豊かな社会の創造に持続的な貢献を果たす企業となることを目的とした中長期の経営のグランドデザインで、その中で中林氏はデータ戦略の立案とその実行を担っている。
同社の経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」は、次の「3つの基本戦略」で構成されている。
①お客さま、社会のニーズに正面から向き合う経営へ転換する
②データに基づいた経営へ転換する
③共創により、物流のエコシステムを創出する経営へ転換する
つまり、「コーポレートトランスフォーメーション(CX)」「DX」「イノベーション」である。さらに、それらの基本戦略に則る形で、それぞれ3つの事業構造改革・基盤構造改革を掲げた。
中林氏は、DHBR2022年10月号に寄稿した論考「ヤマト運輸のデータドリブン経営は、社員全員のデジタルリテラシー向上で実現する」(https://dhbr.diamond.jp/articles/-/8854)の中で、「データ・ドリブン経営への転換」として5つのデータ戦略を挙げている。
「私が入社した当時は、経営層がさまざまな経営課題を議論していました。そこで挙げられた意見を『13の事業戦略』に分類、整理しました。さらに、それら事業戦略において優先的に実行すべきデータ戦略を12項目挙げ、その数をさらに絞り込み、最終的に5つのデータ戦略を設定しました。
当社の場合では、13の事業戦略とデータ戦略を併せて考えています。事業戦略に対して、必要なデータ戦略を優先的に進めることで、自社が創出すべき価値を考えやすくなりました」(中林氏)