
従業員のパフォーマンスを
正確に測定する難しさ
実力主義は重要である。才能や努力、成果に報いる企業は、縁故主義や組織的な偏見、有害な政治、そして無能さが蔓延している企業よりも、優れた業績を残すだろう。いまは実現できていなくても、遅かれ早かれそうなるはずだ。
ピープルアナリティクスの発展、HRテクノロジーの革新、さらには人工知能(AI)と機械学習アルゴリズムをタレントマネジメントの手法に統合するという流れは、すべて同じ現象に通じる。つまり、従業員をマネジメントし、より合理的かつ公正で、事実に基づくアプローチを徹底的に追求し、人材の可能性を解き放つことだ。
しかし、従業員の職務遂行能力を公平に管理するためのカギとなる、信頼性が高く、正確でバイアスのない測定法は、テクノロジーが進化しても依然として定義が難しい。ハイテクツールはいたるところにある。データを見栄えよくするツールやビジュアライゼーションツール、ダッシュボードなど、さまざまだ。それにもかかわらず、従業員の価値創造を信頼できる形で定量化することは、40年前から変わらず、いまなおマネジメントの現実とはかけ離れている。
たしかに、大企業は、社内のコミュニケーションシステム、プロジェクト管理ソフトウェア、調査プラットフォーム、さらには各種センサーからのデータであふれている。しかし、それらを人間のパフォーマンスとして信頼できる指標に変換する能力は、いまだ発展途上の状態だ。技術面では明らかな進歩があり、データサイエンスの分野でははっきりとした成果もあるが、従業員による成果やパフォーマンス、価値創造への取り組みと、彼らのキャリアにおける成功、地位、序列の間には、依然として大きな開きがある。
マネジャーやリーダーを含めた中で最も優秀な従業員の名前を挙げ、彼らを選んだ理由を確固たる証拠やデータで裏づけるように求めれば、どのような組織も困惑するだろう。多くの場合、組織の成功に実際に貢献したというより、人気投票で勝った、あるいは評判が高いといったことが成功と見なされている可能性が高い。
この問題を克服するには、まず、意味のある本物のパフォーマンスはどのような要素から構成されるのか、それが組織の上位の目標とどのように結び付くのかを、明らかにする必要がある。つまり、従業員個人からチーム、部門、そして会社全体に至るまで、一連のパフォーマンス指標をつくるということだ。
理論的なものを数値化する
こうした組織的な欠陥が生じる一般的な理由は、従業員の組織への貢献(価値のある仕事を効果的に遂行する能力だけでなく、
職務遂行能力は、幸福感や誠実さ、ナルシシズムと同じように理論的な構成概念である。観察できるのはその目安や兆候程度だが、それらを正確に観察するには、適切なインセンティブ、モデル、専門知識、努力、信頼できる評価ツールが必要である。なかでも評価ツールは、洗練され、内部的に有効性が確認されたものでなければならない。つまり、直観的なものではないのだ。