社会問題に関する企業の戦略を取締役会はどう導くべきか
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サマリー:この数年で、企業には社会的な問題に関与し、公式な立場を示すべきだという世間からの圧力が高まっている。これに対し、ほとんどの取締役会は、業務の一環として議論していないことが明らかになった。本稿では、組織... もっと見るが現在の環境を乗り切れるよう支援をするうえで、取締役の指針となる6つの原則を紹介する。 閉じる

企業に社会問題への関与を
求める圧力が高まる

 この数年、筆者らはCEOをはじめとする経営幹部から、ある相談を受けてきた。ほんの数年前までなら、自分たちの活動範囲外と考えられていた問題に関与し、公式な立場を示すべきだという圧力が高まっているというのだ。筆者らが属するエデルマンの行った信頼度調査「トラストバロメーター」を含む最近の調査でも、この圧力は今後も続き、増大する可能性があることを示唆している。

 企業は、行動を起こさない場合にも、行動を起こす場合と同じだけのリスクがあることを認識し始めている。一歩間違えれば、評判や財務に重大な影響を及ぼすおそれがある。企業の社会的責任とガバナンスに対する期待の変化は、ステークホルダーがどのように反応するかについて、不確実性を増大させる。

 取締役会に監督責任があることから、取締役からは次のような質問が筆者らに寄せられている。

「経営陣が発言すべき社会的な問題は何かを決める際に、関与すべきか」
「CEOと会社が公式な立場を示すべき状況とはどのようなものか」
「関連するリスクを適切に監視するために、経営陣にどのような質問をすべきか」

期待を把握する

 2022年版のエデルマン・トラストバロメーターでは、世界28カ国3万6000人を対象に、企業が社会問題に対して十分な対応をしていると考えているか、それとも過剰な対応をしていると考えているかを調査した。その結果、どの問題においても、大差をつけて、社会問題へのさらなる関与が求められているとわかった。

 最新の労働力データによると、共和党員も民主党員も、経済的不平等、人種的公正、気候変動といったテーマについて、企業が関与することをより期待している。したがって、企業の姿勢や関与しない状況は、顧客の認識、ひいては業績に重大な影響を与える可能性がある。

 しかし、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が行った2022年の「企業取締役調査」では、ほとんどの取締役会が業務の一環として社会問題を議論していないことが明らかになった。この状況は、変えなければならない。

 以下は、組織が現在の環境を乗り切れるよう支援をするうえで、取締役の指針となる6つの原則だ。

その場しのぎの決断を避ける

 CEOや企業が社会問題について声明を出すか、沈黙を守るかを決断する時、それはたいてい数人の経営幹部が行う判断に基づいている。彼らは、それが適切だと同意している。しかし、こうした決断は、厳密な分析やステークホルダー、特に従業員の360度分析よりも、その場の感情に左右されやすい。

 取締役会はCEOに対し、慎重な検討を経る意思決定の枠組みを要求すべきだ。雑音をはねのけ、企業の言動がパーパスに基づいたものか、偽りのないものか、リスク調整されたものかを確認するための枠組みだ。目指すのは、リーダーシップチームがステークホルダーにとって重要な問題を優先し、熟考し、最終的にビジネス目標を支援する行動を決めるのに役立つ、一貫したアプローチを構築することである。