3. 小さな実験をする
行動を少しだけ変えて、自分の感情や周囲の反応にどのような影響があるかを見てみよう。たとえば、「5分間、一緒にブレインストーミングしていただけないでしょうか」と尋ねたり、「クライアントに出す提案書を作成したのですが、見ていただき、意見を聞かせていただけませんか」と頼んだりする。簡単なことでよいのだ。
また、自分に助けを求めてくる相手のことを、自分がどのように見ているかも自己観察する。相手のことを「頭が悪い」「能力が低い」と思っているだろうか。あるいは、助けを求めるのはまったく普通のことで、自分が実際に助けになるかどうかは別にして、喜んでその相手を助けようと思うだろうか。
4. 周囲に知らせる
自分が助けを求められるように努力していることを、周囲の人に知ってもらう。同僚に伝えると、協力を得られるだけでなく、いざという時に自分から相手に助けを求めやすくなる。自分が「手を貸してほしい」と頼んだ時に、同僚が受け入れてくれることがわかっていれば、それが「正の強化」をもたらして「助けを求める」という行動を後押しするため、助けを求めることへの抵抗感がさらに小さくなるはずだ。
5. 練習の機会や説明責任を果たす仕組みをつくる
具体的かつ実現可能な目標を設定して、練習の機会や説明責任を果たす仕組みをつくろう。1日、あるいは1週間に助けを求める目標回数を設定するとよいだろう。説明責任を果たすには、コーチを付けたり、友人や同僚に進捗を報告したりすることもできる。自己管理できるならば、自分自身で記録を付けてもよいかもしれない。
筆者がクライアント(特に転職先を探している人、つまり本当に人に助けを求めることが必要な人)によくやってもらうのが、「20回、断られる」というエクササイズだ。筆者がコーチングを行ってきた20年間、誰一人として達成できていない。
また、日々のストレスレベルを1~10の数字で記録するのもよい方法だ。ストレスレベルが8以上なら、なぜそれほど高いのか、原因を突き止める。そのうえで、ストレスレベルを少なくとも6、もしくは7に下げるために助けを求めよう。私生活で助けを求める練習をすることも、この筋肉を鍛えるのに役立つ。
6. 一歩下がって、定期的に振り返る
内省は、多くの気づきが生まれる場所だ。定期的に(毎日、毎週など)時間を決めて、次のような振り返りの質問を自分に投げかけよう。
・どこで助けを求めることができたか。
・それを容易にしたのは何か。
・本当は助けが必要だったにもかかわらず、助けを求めなかったのはどの部分か。
・助けを求めるのを躊躇したのはなぜか。
・次に助けを求める機会はどこにあるだろうか。
・次は何を変えてやってみるか。
この内省に、多くの時間をかける必要はない。たとえば、5~10分程度で構わない。単にこれらの質問について考えるだけだとしても、内省によって気づきを得ることが重要だ。それぞれの問いに対する答えを書き留めるか、誰かと話す、
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助けを求めることへのためらいを克服するには、継続的な練習と内省、そして新しい考え方を結びつけることが必要になる。アンラーニングとリラーニング(再学習)、つまり本当に助けが必要な時に助けを求めることを妨げる、古い非生産的なパターンを捨て去り、新しい行動様式を学習し直すことだ。そうすれば、自分は職場でサポートされていると感じられるようになり、仕事に追われていると感じることが少なくなるだろう。
"How to Get Better at Asking for Help at Work," HBR.org, December 22, 2022.