3. 自社のIT支出は有効で、適切な水準にあるか
多くの企業にとって、明るい未来を切り開けるかどうかは、自社で大変革を起こし、クラウドサービスの分野で成功を収められるか否かにかかっている。そのためには、顧客に向けて真の差別化を成し遂げなくてはならない。しかも、これまでより少ないコストでそれを実行することが求められる。
しかし、往々にして大変革への道はあまりに遠く、企業はしばしばクラウドの恩恵を十分に引き出せずにいる。そのような企業は、自社がそうした状況にある理由を明らかにしたほうがよいだろう。理由は多くの場合、マネジメント層の足並みが揃っていないことだったり、異なる未来像を描いていることだったり、計画を実行に移せなかったりしたことにある。
いま必要なのは、実行を担うチームとの連携を密にし、視野を広く持って、デジタル関連の能力をビジネスの成長につなげる方法を考えることだ。そのためには、部署の垣根を越えてデジタル・トランスフォーメーション(DX)を実行し、マネジメント層の意思決定のスピードを向上させ、変革をより積極果敢に推進し、社員に責任感を持たせなくてはならない。
最新のPwCパルスサーベイによると、企業の最高情報責任者(CIO)の52%は、意思決定の質と速度を改善するために、データ解析を取り入れる方法を模索しているという。そして、CIOたちは、コスト削減と生産性向上のために優先的に取り組むべきとして、自動化の推進、旧来型のインフラのデジタル化、セルフサービス型のITシステムの導入を挙げている。
最高幹部たちのテクノロジーに関する知識を高めること、そして計画を実行に移す能力を高めることは、いずれも完全に自社でコントロールできる範囲内のことである。
4. 自社の事業ポートフォリオは複雑すぎないか
いま企業は数々の試練にさらされている。クラウドサービスへの進出を果たし、自社の大変革に取り組み、エネルギーをめぐる変化と地政学的緊張に対処しなくてはならず、世界の分断に拍車が掛かり、「グローバル企業」であることの恩恵も揺らいでいる。
このような状況を受けて、自社の事業ポートフォリオが妥当かどうかを問い直しているビジネスリーダーも少なくない。多くの大企業は、一部の事業を売却して、クラウド関連やエネルギー関連で必要とされる移行を成し遂げるための資金を調達したり、自社の大変革を成功させるために事業全体をシンプルにしたりしている。
自社の事業ポートフォリオにどの事業を残し、どの事業を残さないかという判断も、全面的に自社がコントロールできることだ。
5. どうすれば自社のリスクを減らせるか
いま、企業にとってのリスクはこれまでになく増えている。サプライチェーンの継続性に関わるリスク、販売と調達で特定の市場に依存しすぎることのリスク、エネルギーへのアクセスに関わるリスクにもさらされているし、インフレ、規制、自社のイメージ、データの正確性、セキュリティなどのリスクもある。
今日の企業は、こうした状況から逃れることができない。そこで、企業はまず、客観的にリスク評価を行い、リスクを減らすための取り組みを冷静に、そして積極的に行う必要がある。具体的には、サプライチェーンの多角化を進めたり、特定の地域に依存しすぎないようにしたり、自動化とアウトソーシングを実行したり、インフレの影響を緩和したりするなど、リスクを軽減するための投資を行なっている企業が多い。
前もってリスクマネジメントを行うことの利点は、かつてなく高まっている。それに成功した企業は、利益を伴う成長へと突き進める可能性が高い。有効なリスクマネジメントの実行も、自社が完全にコントロールできる範囲内のことだ。
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今日の市場で、企業に対する向かい風が強まっていることは事実だが、それでも勝者になる企業はある。自社がコントロールできることに集中し、その範囲内の課題に優先的に取り組む企業は、社員、顧客、投資家、そしてその他のステークホルダーの信頼を勝ち取り、維持できる。
一方、自社がコントロールできることに集中しようとしない企業は、投資家の信頼を失い、株主の介入を招き、(もしかするとこれが最も重大な問題かもしれないが)社員の信頼もなくしかねない。今日、社員はこれまでになく、自社のリーダーの振る舞いを注視しているのだ。
明るい材料は、本稿で挙げた5つのテーマではすべて、集中して取り組めば素晴らしい成果を上げられるという点だ。しかも、いずれもその会社のマネジメント層がコントロールできる範囲内にある。
"5 Questions for Business Leaders to Ask in Uncertain Times," HBR.org, December 16, 2022.