本心を伝える
子どもを守りたいという思いから、本能的に自分の感情を隠したくなるかもしれないが、実は子どもにとっては、本当の感情を伝えるほうが健全だ。臨床心理学者のジュリー・フトレル博士によれば、子どもはあなたの言葉が、自分の察知したあなたの感情と一致していないと、そのずれに気付くという。
親が感情を率直に表現すると、子どもは母親や父親を一人の人間として見られるようになり、レジリエンスや健全な対処法を目の当たりにできる。いまの気持ち、その理由、そしてそうした感情をどうコントロールしているかを、子どもと共有しよう。「パパは今日、すごく悲しい気持ちなんだ。悲しくなってもいいんだよ。でも、パパは大丈夫。幸せな気持ちに戻れるよう、必要なことをするからね」
ただし、注意してほしいのは、子どもを自分の心の支えにしないことだ。それは子どもの役割ではない。厳密な境界線を守り、心の支えとなってくれる信頼できる大人に囲まれて過ごそう。
家族の絆をはぐくむ
レイオフは多くの学びを与えてくれる。自分は何者で、いかにして困難な時期に向き合うかを家族で考えてみよう。そして、その話し合いを、家族としてのアイデンティティを肯定的に確認し合う機会にしよう。たとえば、「私たちはコールマン家だ。一緒にがんばれば、困難を乗り越えられる」という具合である。
自分たちをポジティブに肯定することで、神経回路が変化し、脳の報酬中枢が刺激されるとの研究もある。また、子どもたちが安定感とチームワークの感覚を知る機会にもなる。家族が団結すれば、きっと出口は見つかるはずだ。
一貫性を保つ
子どもは、家庭での安定した生活習慣を通して成長する。変更せざるを得ない点もあるだろうが、日々をできるだけ「いつも通り」に過ごすことで、安心感と安全感を高められる。
必要な変化に家族で取り組む
一貫性を保つことが目標である一方で、ライフスタイルにある程度の変更を加えることも必要になるだろう。この機会に子どもたちを巻き込んでブレインストーミングを行い、家計の予算案を作成してみよう。
テーマとして適切なのは、食料品にかける予算、クリスマスの出費、週末のアクティビティ、服を買うためのお小遣いなどだ。これは、家族全員が既成概念を取り払って考えるチャンスになる。予算内で楽しい食事を用意する計画を立てたり、お財布に優しいユニークなアクティビティをリストアップしてみたりする。インターネットで検索すれば、クリエイティブなアイデアが無数に見つかる。家族で取り組めば、全員が状況をコントロールできている感覚を持てるうえに、子どもたちの将来役に立つ金銭感覚を教える機会にもなる。
ボランティア活動に一緒に取り組む
人は他者に奉仕することで、自分の状況や苦痛を超えた視点で物事を見られるようになるという研究がある。家族でボランティア活動に参加すれば、非常に有益な経験になるだろう(しかも無料だ)。
家族でボランティアに携わる経験は、充実した時間と思い出をもたらし、子どもに利他主義と思いやりについて貴重な教訓を伝える場にもなる。また、そうした経験によって幸福感が高まることもわかっている。
長期的な視点でレジリエンスを教える
覚えておいてほしい。レイオフは珍しい話ではない。今回が初めてという人もいれば、過去に経験したという人もいるだろう。
自分の子ども時代を思い返してみよう。両親のどちらかがレイオフされた記憶があるだろうか。もしあるなら、家族がどう対処したか覚えていることだろう。
では、あなたのお子さんはどうだろう。彼らはこの経験をどのように記憶するだろうか。レイオフの経験を懐かしく思い出す人はいないだろうが、この時期に意気消沈したり、家族が壊れてしまったりするとは限らない。それどころか、この経験は家族の絆を強め、貴重な学びの機会にもなりうる。
レイオフは物事をやり抜く力、レジリエンス、前向きな姿勢、忍耐力を子どもに示すチャンスだ。そうした特性を発揮せざるを得ない状況に置かれ、あなた自身もそうした力を実感できれば、それが次の仕事への糸口となるかもしれない。
"How to Talk to Your Kids About Layoffs," HBR.org, January 3, 2023.