クラウドに注力する

ウィリアム・フォレスト、シカゴ

 2022年は多くのCEOが、クラウドコンピューティングに対する見方を変えた。基本的に「CIOが勧めるのでクラウドに移行するつもり」だった姿勢が、「全面的に注力したい」に変わったのだ。私が最近これを実感したのは、ある大手銀行のCEOが、自社のクラウドへの取り組みで着実な進展が見られないことへの不満を述べた時だ。彼は取り組みを縮小するどころか、さらに意欲的な目標と、実現するまでのスケジュールの前倒しを宣言したのである。

 現在、企業はクラウド化への意欲を高める絶好の機会を手にしている。テック企業が人員を削減し事業を廃止しているため、下位20%のパフォーマーだけでなく、一流人材が労働市場に流れている。その多くはすぐに獲られてしまうものの、企業は自社のクラウド能力の大きな前進させるためには、クラウド化を加速する人材の獲得に向け、素早い対応を検討すべきである。

 したがって重要な問いは、これら2つのトレンド(経営幹部の関心の高まりと人材の増加)を企業がどのように活かすか、である。企業によるクラウドへの取り組みの大半は、単にアプリケーションを自社のサーバーから移すか(「リフト・アンド・シフト」と呼ばれることが多い)、または新しい施策を試すためのテスト・開発環境の構築に限られていた。だが、いまこそさらに大きく、賢く考えるべき時である。

 企業は2023年には、クラウドがもたらす最も重要なメリット(たとえばアプリケーションのスケールアップや、需要の急増に対応するキャパシティの自動拡張など)を活かせる強固なクラウド基盤の構築に注力すべきだ。そのためには、適切なアプリケーションのパターン(複数のアプリケーションやユースケースに対応するコードベース)の構築が必要となる。

 また、FinOps(フィンオプス)と呼ばれる、クラウドの経済性を管理する能力を確立することも求められる。最近のマッキンゼーの調査によると、企業はクラウドのコストが1億ドルを超えるまではあまり注意を向けない傾向がある。これは膨大な無駄であるだけでなく、価値創出の機会の逸失でもある。

 FinOpsの能力によって、支出の監視と追跡、さまざまなクラウド利用シナリオにおけるユニットエコノミクスの算出、企業の消費ニーズに応じたクラウドサービスと料金設定の最適化が可能になる。