取締役会に、転換点を迎えているテクノロジーに対する準備をさせる
クレメンス・ジャーター、コペンハーゲン
5GやAI、クラウドなどの革新的なテクノロジーは、大規模な普及に向けての転換点を迎えている。たとえば我々の調査によると、企業は2025年までにIT資産の約6割をクラウドに移すことを考えている。また、自社の少なくとも一つの部門にAIを導入したと答えた企業は過半数に上る。
取締役会は、IT予算への支出を横ばいにするか減らすことばかり考えているかもしれないが、この大きな変化に伴うリスクと好機に対して継続して注力する必要がある。
そのために取締役会は、スピード、セキュリティ、レジリエンス、再利用性の確保に向けたIT基盤のアップグレードに予算を優先配分しなくてはならない。これは最先端分野への投資ではないが、企業がオンラインの新規テクノロジーを最大限に活用するチャンスをつかむには、プロセスの自動化、データ基盤への投資、技術的負債の処理、ITアーキテクチャーの継続的な更新が必要なのだ。
取締役会は、このアプローチを推奨するための最適な立場にある。ITの優先事項は往々にして、個々の事業ユニットや事業部門によって形成される。技術基盤、つまり「ITのためのIT」への投資は会社全体に寄与するため、取締役会は経営陣と連携して取り組みを主導しなければならない。経験則からいえば、IT変革の予算の15~20%をこの基礎工事に割り振る必要がある。
リーダーは、取締役会がみずからこの見解にたどり着くと考えてはならない。取締役会がしっかり関与できるよう、CIO(最高情報責任者)とCTO(最高技術責任者)はテクノロジーの優先事項とニーズについて、取締役一人ひとりと継続的かつ頻繁に話をする必要がある。