この考え方を検証するための最初の実験として筆者らは、回答者に一定の状況を示し、その状況でどのような行動を取るかを回答してもらうビネット調査を行なった。具体的には、リーダーが自分の弱点(大勢の前で話すのが苦手だとか、最新のテクノロジーについていけないとか)を打ち明けるパターンと、打ち明けないパターンを示し、そのリーダーについてどのように感じるかを回答者に尋ねたのだ。

 すると、結果は一貫していた。リーダーが自分の弱い部分を打ち明けると、本当の自分を隠していないという印象は強くなった。一方、仕事の能力や人間としての温かみに関する評価が下がることはまったくなかった。要するに、自分の欠点を語ることは、恩恵こそあっても、特段の弊害はないのだ。

 ただし、誤解してはならない。リーダーが自分の最も深い、そして最も暗い秘密を、どのような状況にあったとしても自由に打ち明けてよい、というわけではない。筆者らの研究によると、弱さを見せることが恩恵をもたらすのは、共感できる人間らしい失敗の類いを語った時に限られる。スピーチをしている時にパニック発作に襲われた経験など、深刻な問題を語っても、効果はない。また、部下に無礼な態度を取ったとか、非倫理的な行動を取ったといった類いのことを打ち明けても、おそらく効果はないだろう。