リーダーが弱点を見せるべき理由
Michael Blann/Getty Images
サマリー:リーダーシップを発揮するためには、適切に弱さを見せることが肝要である。本稿の筆者らが取り組んできた研究では、この点が裏付けられた。ただし、周囲に信頼されたり、協力を得られたりするためには、ただ弱さを伝... もっと見るえればよいわけではない。そこで本稿は、どのような状況で、どのような内容の弱さを見せれば効果的なのかを論じる。 閉じる

リーダーが適切に弱さを見せることの恩恵

 1980年代後半、キヤノンはプロテニス選手のアンドレ・アガシを起用したテレビCMを放映した。このCMで打ち出したのが、「Image Is Everything」(イメージこそがすべて)という悪名高いキャッチフレーズだった。長きにわたり、あらゆる分野のリーダーたちがこれと同じ発想で行動してきた。自分がパワフルで、強くて、欠点のない存在だというイメージをつくり上げるために、できることは何でもやったのだ。

 しかし、最近の研究によると、リーダーとして成功するのは、常に完璧である人ではなく、本当の自分を正直に見せている人だという。フォロワーは、リーダーが本当の自分を隠していないと感じると、ウェルビーイングが高まり、その組織を信頼し、パフォーマンスが改善し、いっそう真剣に仕事に打ち込み、より倫理的な意思決定を行うようになるのだ。

 問題は、「Image Is Everything」という発想から脱却するのが容易でないということだ。リーダーはしばしば、この点で苦労する。筆者らの研究によると、その理由の一つは、自分が強い人間であると印象付けようとし、弱さを見せることを意識的に避けたがる点にある。

 この傾向は、筆者らが行った予備的研究でも浮き彫りになった。その研究では、さまざまな組織のリーダーたちに、一緒に働く予定の人たちに対してどのように自己紹介するかを文章に記してもらった。すると、大半の人は、自分の強みにばかり言及した。自分の弱さについて語る人はほとんどいなかった。おそらく、弱さをさらけ出すと、自分のイメージに悪影響が及ぶとおそれているのだろう。

 実際には、そのようなことはない。筆者らの研究によると、リーダーが自分の弱い部分を打ち明けると、その人物が本当の自分を隠していないという印象を与えられる可能性がある。そう考えると、多くのリーダーは、自分の強さばかりを語ることにより、働き手との信頼関係を育むチャンスを無駄にしていることになる。

 筆者らの研究で明らかになったように、リーダーが自分の弱さを開示することの恩恵は、リーダーの性別に関係なく見られる。また、その効果は、リーダーの地位が高いほど大きい。重要なのは、ただ本当の自分を見せるだけでなく、重要な局面でそのような行動を取ることだ。