筆者らは、リーダーが自分の弱さを見せることの効果をさらに現実に近い状況で調べたいと考えた。そこで、グーグルの幹部に依頼して、一緒に働く予定の人たちに対する自己紹介という想定でスピーチをさせ、そのなかで自分の弱点を語らせた。そして、それを録画したものを編集して、2つの映像を作成した。片方は、弱さを打ち明けた言葉をそのまま残したもの。もう片方は、その発言を削除したものだ。そのうえで、専門職の働き手たちを無作為に2つのグループに分け、いずれかの映像を見せ、語り手がどのくらい本当の自分をさらけ出しているかを評価させた。

 すると、自分の弱点を打ち明けるスピーチを聞いた回答者たちのほうが、語り手が本当の自分を見せていると判断する傾向が強かった。

 筆者らはその後、同様の実験を行い、語り手がスピーチをした動機は何だと思うかと、回答者たちに尋ねた。すると、自分の弱さを打ち明ける言葉が含まれていないスピーチの映像を見た回答者たちは、自分の印象をよくしたいという戦略が動機だと判断した。スピーチを通じて、自分を偉く見せたいのだろうと考えた。それに対し、自分の弱い部分について語る言葉が含まれた映像を見た人たちは、語り手が不都合な情報を隠さず、戦略的に振る舞うことなく、本当の自分をさらけ出していると感じた。

 ただし、単に自分の弱さを見せるだけでは、本当の自分を見せているとは思ってもらえない。重要なのは、自発的に、自分の弱点をさらけ出すことだ。人はある人物について評価を下す際、その人物の意図を考慮せずにいられない。強く求められてはじめて自分の弱点を打ち明けたり、現場を押さえられてやむなく白状したりしても、好ましい意図を持って行動したとはみなさない。

 筆者らの過去の研究によれば、人は他人の動機を推測し、その推測に基づいて判断を下すことが多い。そして、その後の研究により明らかになったのは、実験でマネジャー役の人物が自分の弱点を正直に見せると、人々はその人物と一緒に働きたいと思い、いわゆる「信頼ゲーム」を行なった場合も、その人物を信頼し、より多くのお金を委ねる傾向が見られる。要するに、本当の自分を隠さずに見せることには、相手から協力的な行動を引き出す効果があるのだ。

 リーダーは、「Image Is Everything」つまり、イメージこそがすべてという発想ではなく、「本当の自分を見せることこそが重要である」という発想に転換すると、恩恵があることを知るべきだ。完璧で強力というイメージを常に守ろうとする人は、本当の自分のごく一部しか見せていないという印象を持たれかねない。それに対し、自分の弱さを受け入れて、共感できる人間らしい欠点を打ち明ける人物は、正直で信頼できるリーダーだと思ってもらいやすいのだ。


"Research: Why Leaders Should Be Open About Their Flaws," HBR.org, January 11, 2023.