品質パフォーマンスの重要性
ブランドや製品、サービスに対する、顧客の品質認知はどのように発展してきたのだろうか。ここで大切なのは、品質を構成する要素は何かということである。ACSIで測定される品質は、信頼性とカスタマイズ性を指すが、カスタマイズ性は顧客満足度のドライバーとして信頼性よりも優位にある。マクロレベルでは、品質は過去12年間で100ポイント中79~83のレンジに収まってきた。食品メーカーのクエーカーオーツカンパニーは、品質全般で高いスコアを出し、BMWとスーパーマーケットチェーンのパブリックスは、それぞれ製品とサービスのスコアが最も高い。
多くの企業にとってこれから考えるべきは、顧客が他の製品やサービスと比較した時に優位性を感じる知覚品質の向上なしに、満足度を向上させる戦略だろう。だが、経営者の思惑に反して、品質は価格に勝る。視野を広げると、大半の経済、産業界において品質は、顧客満足度のドライバーとして、価格だけでなく価値よりも優先される。さらに、現在の「マス・カスタマイゼーション」経済では、満足度は製品やサービスの信頼性よりもパーソナライズ化の可能性に左右される。
価値とは価格の多寡である
顧客の価値に対する認知は、顧客満足度の他のドライバー(製品やサービスの質、顧客の期待など)よりも長い時間をかけて向上してきた。過去30年間のACSIのデータに基づく事実を踏まえ、顧客満足度のドライバーとして価値に注力し続けることは現実的だろうか。おそらく、イエスである。ACSIのデータでは、まだ価値のポイント幅は顧客の期待や品質よりも低い(過去12年間で平均スコアは76~79)。つまり、向上の余地があるのだ。
また、これまでのように製品やサービスの質ではなく、価格に基づく価値提案(バリユープロポジション)によって、顧客満足度と経済成長を促進することには、プラスの面とマイナスの面がある。価格に基づく価値提案によって起こる長期的変化は、論理だけでは計れない。知覚価値の指標は過去30年間で米国全体では向上しているが、必ずしもすべての経済セクターや産業が価値を向上させているわけではない。成功例としては、ピザチェーンの多国籍企業リトル・シーザーズがある。同社は価値提案を非常にうまく管理している。オンライン小売業者ニューエッグ・コマースもほとんどの事業を価値に基づいて推進している。
満足は保証できない
ACSIスコアは、顧客体験、カスタマージャーニー、顧客と企業の関係の健全性を理解することを目的としている。スコアが示すものは、因果関係に基づいた顧客満足度の科学的評価である。ACSIは顧客満足に関するデータを継続的に収集し、公表している。アマゾン・ドットコム、クロロックス、クラフト・ハインツは、ACSIの顧客満足度指標で常に高いスコアを獲得している企業の好例である。チックフィレイも、ファストフード・レストラン業界で約10年間、トップの座に留まり続けている。
さらに視野を広げると、顧客満足度は米国内のマクロ経済成長と、経済の変化の極めて重要な予測因子である。個人消費は米国経済(GDP)の約70%を占め、次の四半期の消費成長において、30%は顧客満足度の向上に起因する。ACSIによる測定では、顧客満足度の平均レンジは過去12年間で73~77である。
クレームをつける顧客に感謝する
クレームをつける顧客に感謝することを学ぼう。多くの企業が顧客のクレームを否定的にとらえるのは無理のないことだ。クレームはやっかいであり、時間を取られ、耳を傾けて対処するためにはリソースを必要とする。クレームに上手に対処する企業は、より強固な顧客ロイヤルティをつくり出せるだろう。ただし、ほぼ完璧なクレーム処理をしなければ、顧客は戻ってこない。少なくともクレームの前と同じレベルでは満足しない。
クレームを真摯に受け止める企業は、より競争力の高いブランドや製品、サービスを展開できる。つまりクレームは、肯定的にとらえることができるのだ。残念ながら、多くの顧客は不満を抱いてもクレームとして訴えないので、長期で見ると未知の不満は、企業にとって好ましくない結果をもたらす。ポジティブな情報として、食品メーカーのキャンベル・スープ・カンパニーとアパレルメーカーのリーバイ・ストラウスは、クレームを訴える顧客が非常に少ない。どの業界でも平均して12.8%の顧客がクレームをつけることを踏まえると、これは驚くべきことである。