5. 複数人が取締役会のリーダー就任に関心を示した場合はどうするか

 取締役会のリーダーの座を複数の取締役が競い合う状況は、実に決まりが悪い。その点、取締役会が新しいリーダーの選考を行う前に、ある方法を実践することが好ましいかもしれない。取締役たちを対象にアンケート調査を行い、取締役会にとって欠くことのできないメンバーを3人もしくは4人挙げさせるのだ。次期リーダーに名乗りを上げているメンバーがアンケートであまり名前が挙がらないようであれば、その人物は適任といえないだろう。

6. 取締役会のリーダーには、どれくらいの報酬を支払えばよいのか

 取締役のリーダーの仕事は、難しく、しかも時間がかかる。その時間的な負担はたいてい、ほかの取締役の少なくとも2倍に達する。そのため、取締役会は、リーダーに、ほかの取締役よりも、さらには取締役会の主要な委員会の委員長よりも、大幅に高い報酬を支払いたいと考えがちだ。

 それぞれの会社の歴史と報酬に関する慣行は尊重すべきだが、このようなやり方は採用すべきでないと、筆者らが調査した取締役たちは述べている。取締役会が2つの階層に分かれているような印象を生み出しかねないからだ。

 フォーチュン50に名を連ねる企業のCEOは、こう説明する。「ある程度の規模の上場企業で筆頭社外取締役を務めるような人物は、お金が目当てでその役職を引き受けるわけではありません。それなのに、なぜ一人の取締役がほかの取締役たちより格上であるかのような印象をわざわざつくり出すのでしょうか」

 ただし、会社の危機を乗り切るためにCEOを支えたり、トップの継承プロセスで有効なリーダーシップを振るったり、大規模な企業買収を導いたりするなど、筆頭社外取締役が目覚ましい働きをした場合は、特別に株式報酬を提供してもよいだろう。

7. 取締役会のリーダーに任期制限は必要か

 筆頭社外取締役に任期制限を設けるべきかどうかについては、意見が分かれている。2022年のデータによると、米国を代表する株価指数S&P500を構成する企業の筆頭社外取締役の平均在任年数は4.4年だ。企業の取締役たちに対する筆者らの調査によると、任期制限は必要ないと考えている人が多い。比較的新しい人物がよい仕事ぶりを発揮しているのに、わざわざ退任させる必要はない、というわけだ。

 前出のホールマークの元CEOであるホッカデーは、この点に関して少しひねりを加えたアイデアを提案している。

 「任期を定めておいて、契約を更新できるようにすればよいのではないでしょうか。そうすれば、任期が終わりに近づくと必然的に、その人物の下で取締役会がどのくらいうまく機能しているのか、その人物がどの程度の成果を上げているのかを議論することになります。このやり方であれば、取締役会のリーダーがよい仕事をしている場合は、機械的に退任させずに済みます。一方、よい仕事ができていない場合は、その人物に続けさせるべきなのか、別の人物に交代させるべきなのかを話し合う機会が得られます」