
取締役会のリーダーの
重要性が高まっている
今日、企業の取締役会には、厳しい監視の目が注がれるようになっている。極めてデリケートな政治環境の中で、取締役会は、アクティビスト(物言う株主)やさまざまな懸念を抱いている社員たち、地域社会の人々などに対処しなくてはならない。また取締役会には、取締役会そのものと、その会社における多様性を確保する役割も課されている。取締役会のリーダーシップの重要性は、これまで以上に高まっており、その確立は差し迫った課題である。
ところが、筆者らの経験によれば──我々4人は、フォーチュン1000にリストアップされている企業の5分の1を軽く上回る企業の取締役会と関わってきた──多くの企業の取締役会は、取締役会のリーダーの選出、評価、報酬決定、更迭を行うための、考え抜かれた規律のあるプロセスを持っていないようだ。また、CEOと取締役会のリーダー(非業務執行の取締役会議長もしくは筆頭社外取締役)の役割の違いを明確にできている企業も多くはない。
そのような状況下で、取締役会のリーダーが自社の戦略および機会に沿った行動を取り、関心を集中させることは難しい。その結果として、取締役会を適切に監督できなかったり、さらにひどい場合には誤った指針を示したりしかねない。
取締役会のリーダーを選考するプロセスの中で、最も改善する必要があるのはどのような点なのか。筆者らは、それを明らかにするために、米国の優れた企業の取締役や経営幹部、および過去にそのような役職を務めた経験を持つ人たち20人以上に話を聞いた(彼らが取締役や経営幹部を務めてきた企業のほとんどは、グローバルに事業を展開している)。この調査を通じて、取締役会が新しいリーダーの選考に乗り出す前に検討すべき8つの問いが見えてきた。
1. リーダーに求める人物像が一致しているか
「取締役会での議論は、新しいリーダーに求める職務内容について議論することから始めるべきです。そのうえで、どのような資質の持ち主を選ぶべきかについて意見をすり合わせる必要があります」と、グリーティングカード大手ホールマークの元CEOで、ダウ・ジョーンズ、フォード・モーター、エスティ・ローダー、スプリントの筆頭社外取締役を歴任したアーバイン・ホッカデーは述べている。
「熟慮を重ねて、ていねいすぎるくらい、ていねいに議論しなくてはなりません」と、ホッカデーは言う。その過程では、すべての取締役が話し合いに加わり、取締役の全員を次期リーダー候補として検討すべきだ。
非業務執行取締役会議長や筆頭社外取締役の人選を行う際は、以下のような点を確認する必要がある。
・CEOと信頼関係を築いたうえでCEOと話ができるが、私情を交えない関係を維持できる人物。
・自社を正しい方向に導くために、関連する戦略的な経験を持つ人物。
・必要に応じて、経営陣や取締役会に異議を唱える勇気を持ち、ほかの取締役たちにも同様に行動するよう促せる人物。
「CEOに反論できる人物を筆頭社外取締役に任命するのが望ましいことは、間違いありません」と、化学大手デュポンのCEOで、ケーブルテレビ大手コムキャストの取締役会のリーダーも務めるエドワード・ブリーンは言う。ただし、「CEOと筆頭社外取締役は、率直に、隠し事なく話し合える関係でなくてはなりません」とも述べている。
2. CEOは選考プロセスにどの程度関わるべきか
CEOは、新しい取締役会のリーダーと日々協働しなくてはならない。そこで、候補者の洗い出しと面接、審査と最終候補者の絞り込みのプロセスにCEOが関与することが重要だ。取締役会のリーダーとCEOは、戦略と人事についての重要な決定の多くを一緒に行うことになる。したがって、両者は互いの選考プロセスにある程度の発言権を持つべきだ。