8. 取締役会のリーダーの継承計画はどうなっているか
賢明な企業は、万一CEOが病気などにより、突然職務を果たせなくなった場合に備えて、 CEOの継承計画を設けている。同じように、取締役会のリーダーの継承計画も用意しておくべきだ。
「CEOにとって、しかるべき性質とスキルの持ち主が取締役会のリーダーとしてそばにいてくれるほど重要なことはありません」と、バンク・オブ・アメリカ、フィリップス66、国防・航空宇宙大手レイセオン・テクノロジーズの元取締役で、総合工業用部品メーカー、ITT社の元CEOであるデニス・ラモスは述べている。そのうえで、「CEOだけでなく、取締役会のリーダーの継承プランも用意しておく必要があります」と語る。
また、取締役会のリーダーの継承に備えて、潜在的なリーダー候補の層を厚くしておくためには、取締役会はより多くのCEO経験者をメンバーに迎える必要がある。ただし、現状では、現役のCEOが他社の取締役を務めるのは1社に留めるべきだというのが常識になっている。そこで、機関投資家がこの点に関する考え方を変えなくてはならない。たとえば、退任まで1年以内のCEOには、他の複数の会社の取締役を務めるよう促すべきかもしれない。
取締役会は、取締役会のリーダーが適任かどうかを年に1回は確認すべきだ。自社を取り巻く現在の状況に対処し、好ましい未来を切り開くうえで、その人物がリーダーを担うことが妥当かどうかを検討するのだ。
BP(旧ブリティッシュ・ペトロリアム)、ヒューレット・パッカード、ウェルズ・ファーゴなどの企業では、取締役会が取締役会のリーダーを退任させたことがある。多くの場合は、会社の危機が原因だった。取締役会のリーダーを選考する際は、その任期中に1度か2度の大きな危機が持ち上がり、会社の進む方向が大きく変わることを前提に考えるべきだと、前出のグレン・ティルトンは述べている。そのような重要な局面で経験豊富な人物が取締役会のリーダーを務めているかどうかによって、その会社の運命が大きく変わってくる可能性がある。
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歴史や文化、物事のやり方は会社によってまちまちだろうが、ここまで論じてきた8つの問いを検討することにより、取締役会は、新しいCEOを選考する時と同様の熱意を持ち、徹底的な分析を通じて、取締役会のリーダーを選考できるようになる。この点は極めて重要だ。CEOと会社が成功できるかどうかは、どのような人物が取締役会のリーダーを務めるかにますます左右されるようになっているからだ。
「多くの企業の取締役会は、取締役会のリーダーの重要性が増していることを実感し始めています」と、バンク・オブ・カリフォルニアの取締役で、ホーム・デポの元筆頭社外取締役、ファーストフードチェーンのヤム・ブランズの元取締役でもあるボニー・ヒルは述べている。
数々の企業で取締役を務めてきた経験を持つチャールズ・エルソンもこう語っている。「取締役会のリーダーに適切な人物を迎えていなかったために、取締役会、そして会社全体が大惨事に陥った──私はそのような会社の取締役会といくつも直接関わり、それ以上に多くの事例を目の当たりにしてきました」
"8 Questions to Ask Before Selecting a New Board Leader," HBR.org, January 17, 2023.