「タレントエージェンシー」

 助成する事業の目標や戦略よりも、むしろその可能性に重点を置く。解決しようとしている課題に最も近いところにいる組織変革の仕掛け人、すなわちチェンジメーカーを探し出し、その能力を強化するとともに活動を支援する。公募や人材発掘などのプロセスを用いて、チェンジメーカーの数や幅を広げ、過小評価グループからの予期せぬアイデアやプレーヤーを発掘することも多い。

「シンクタンク」

 社内の専門知識や調査を活用して、政策や構造的な解決策をデザインし、そのアプローチを他者に紹介、販売、公益化し、それらの解決策の実施者を見つける。この場合、コミュニケーションは重要な機能であり、複雑な問題に関する知見を、多方面に広めることに重点が置かれる。

「キャンペーンマネジャー」

 部門や従来の領域を横断することが多い、複雑で時間のかかる解決策を形にするために、多様なプレーヤー(資金提供企業、助成先、公共部門、その他の大規模な組織)のまとめ役を担う。また、そのために協同基金などを構築する。こうした関係を構築するために、敏捷性、忍耐力、信頼といった無形の能力が求められることが多い。人材配置やコミュニケーションにそのような資質を反映させることにより、変革のための多様な視点やアプローチ、理論に対応し、キャンペーンに対するコンセンサスを構築する。

「フィールドビルダー」

 大きな課題の解決に取り組んだり、課題解決に当たり乗り越えるべきギャップを埋めたりする。あるいは強固で活発なエコシステムを構築するために、組織を立ち上げたり、その組織を強化したりする。地道な支援を通じて、組織やムーブメントを育てる。そのミッションを果たすために、助成分野に関する社内の深い専門知識だけでなく、外部の専門家、パートナー、コミュニティなど広範なエコシステムを活用する。他のアーキタイプと同様、強固なコミュニケーション機能を備えている。

「ベンチャーキャタリスト」

 新しい団体や実績の乏しい組織に対して、無制限の資金を早期に提供する。また、公募によってアイデアを募り、外部の専門家との幅広いネットワークを利用して、ニーズや問題点、目標、戦略などを評価し、策定する。柔軟性があるため、新しい手法やリスクを受け入れる。そうすることにより、実績のない解決策が根付き、社会的インパクトをもたらすよう促進する。また、助成金やインパクト投資など、さまざまな資金調達手段を活用する。このアーキタイプでは、多様な意見を集めるための招集能力が重視される。

「デザイナー」

 社内の専門知識を活用し、プログラムやアプローチをデザインする。現地のリサーチや関係者とのやり取りに基づく状況の理解から始まり、エンドユーザーを念頭に置いて、プロトタイプの作成とブラッシュアップを繰り返し、エンドユーザーを巻き込みながらコミュニケーションを取る。他の解決策が存在しない領域で働く傾向がある。そのような状況であっても、単独、あるいは内部主導の介入がステークホルダーに与えうる影響を考えなければならない。そのため、影響を受ける人々、専門家、他の資金提供企業との対話を含む、広範な状況調査と評価を行い、満たされていないニーズに対応するプログラムを設計することが不可欠である。

「アンダーライター」

 長年の関心や価値観、個人的な経験に基づいて、大型の機関(文化、医療、教育関連が多い)、市民団体、または支持している大義に対して「大きな賭け」となる支援を行う機関投資家や個人投資家を指す。直接資金援助をする場合もあれば、信頼できる個人を通じて行うこともある。アンダーライターは通常、助成金の提供や関係構築を優先し、無駄のない運営を行い、存命中の創設者の価値観、関心、個人的な経験、または創設者の遺産によって運営されている。支援する精鋭部隊を通じて、歴史的に虐げられた脆弱なコミュニティを支援するなど、長期にわたる個人の信念や価値観が、その時々の課題にどのように対応できるかを定期的に検討し、効果的に支援する。

「ソウアー」(種を蒔く人)

 多様な個人、団体に数多くの助成金を提供し、具体的なプロジェクトや活動の制約のない助成、助成先参加型の助成などを行うことが多い。このようなアプローチによる累積的な効果で、広範囲にわたる変化をもたらすことに賭けている。柔軟な資金調達手段、企業イメージ、関係構築、パートナーシップ、リーダーシップなどが最も重要なリソースおよび能力である。これらは、助成先との意見交換や相互フィードバックを含む継続的な関係を構築するために優先される。巧みなソウアーは、意識的に戦略を見直し、しっかりとした評価手法を構築することで、戦略が想定した成果をもたらすように取り組む。