
企業の社会貢献活動を分類するフレームワーク「オペレーティング・アーキタイプ」
企業は社会貢献活動(フィランソロピー)を行うに当たり、民間団体、企業財団やファミリー財団、LLC(有限責任会社)などといった寄付先にかかわらず、等しく基本的な疑問に悩まされることが多い。「自分たちのミッションを達成するだけでなく、人々やコミュニティに変革をもたらすために、リソースや能力を最大限に活かせているだろうか」「どのような意思決定の枠組みがあれば、大きなパーパスを持つことと、大きな社会的インパクトを生み出すことにつながるのか」「そのような意思決定をどうすればいち早く、効率的に行えるのだろうか」
このような疑問を解決するために生まれたのが、フィランソロピーの運営モデルをタイプ別に分類する「オペレーティング・アーキタイプ」というフレームワークである。
オペレーティング・アーキタイプは、ロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズ(RPA)が、「財団の理論」(Theory of the Foundation)ラーニング・コラボラティブのメンバーや、世界の数十の資金提供社や、互いにアイデアを共有できるソートパートナーと共に開発した。フィランソロピーに関する検討、調整、行動のための新しい分析ツールである。
企業はフィランソロピーを通じて、何を達成しようとしているのか。そのビジョンや戦略を達成するために資源、能力、人材、つながりをどのように活用すべきかを明確にする。そのような取り組みの結果、組織の意思決定の質を高める。
企業は、助成候補としている事業が行われる理由や内容だけを見て、資金の提供を決めるのではない。変革をどのように実現するか、そして、その事業活動を誰に実施してもらうかも同様に重要である。そのため、資金提供企業が社内で直面する最も大きな課題の一つは、助成する事業の運営モデル、ミッション、社会的インパクトと、それに関わる人材や能力とを整合させることである。
オペレーティング・アーキタイプのフレームワークを使うことによって、資金提供企業はフィランソロピーの「現在の地点」、「目指す到達点」、他のプレーヤーとの「比較」、エコシステムの中での「みずからの位置付け」を明確化できる。また、現状と目標との間にある潜在的なギャップも把握できる。そしてフィランソロピーに取り組む組織の強み、人材、能力を評価するための共通言語をつくることもできるのだ。
おのおののオペレーティング・アーキタイプは、複数の特性によって定義されている。これらの特性は、資金提供企業、助成先、ソートパートナーへのヒアリングやフィールドテスト、定量的・定性的なデータ収集、クライアントワークなど、数年にわたる試行錯誤を通じて開発され、磨かれてきた。オペレーティング・アーキタイプは、資金提供企業が明確かつ自信を持って答えるべき、以下の重要な問いを通じて、分類することができる。
・理由、価値提案:何をなぜ行うのか。
・リソース、何をもって主導するか:ミッションを達成するために使用する主な資産は何か(金銭、金銭以外)。
・主たる能力、スキル:最も得意とするスキル、専門分野、能力は何か。
・公平性:最も被害に遭っている人々の声をどのように取り入れ、力を与え、公平性を高めるのか。
・対応、活動:問題に取り組み、解決策を講じるために何を行うのか。
・主な対象者:誰のためにそれを行うのか。
・支援するコミュニティ:誰のためにそれを行うのか。
・関係、提携:誰とそれを行うのか。
・インパクト評価:成果をどこで測るのか。
RPAは、これらの特性をもとに、フィランソロピーを特性で分類する以下の8つのオペレーティング・アーキタイプを割り出した。