
親切心が仇になる時
建設的なフィードバックは、誰にとっても成長に不可欠だ。しかし、マネジャーがチームメンバーにフィードバックを行う際、常に率直さと優しさのバランスを公平に保つのは難しい。
特に、筆者らの最近の研究では、男女の従業員がまったく同じレベルのパフォーマンスを発揮していて、マネジャーが同一のフィードバックを与える際にも、女性に対してフィードバックをする時には、男性に対してフィードバックをする時と比べて、優しさを優先する傾向があることが明らかになった。
筆者らは一連の研究で、米国と英国のMBA課程の学生、フルタイム勤務の従業員、マネジャーの計1500人以上に、パフォーマンスの向上が必要な従業員に対して成長を促すためのフィードバックを行う状況を想像してもらった。対象となる従業員については全参加者に同じ説明がなされたが、唯一の違いが人物の名前で、半数には「サラ」、残りの半数には「アンドリュー」と伝えられた。
そのうえで、この対話に臨むに当たっての目標を参加者に尋ねたところ、全員が「率直なフィードバックをしたい」と答えたが、サラという名前を伝えられた参加者は、アンドリューと伝えられた参加者に比べて、優しさも同様に重視する可能性が著しく高かった。
これは、フィードバックを行う側の性別や政治的傾向に関係なく当てはまった。つまり、性自認が男性か女性か、政治的傾向がリベラルか保守かにかかわらず、参加者は一貫して「女性にフィードバックをする時は、男性にフィードバックする時よりも優しくしようとする」と答えたのだ。
筆者らは、この結果をさらに確認するために、MBA留学生の大規模コホートについて、MBAプログラムに参加する前の元の上司、メンター、同僚、部下の計4800人以上から与えられた実際のフィードバックを分析した。その結果、他の条件がすべて同じ場合でも、女性へのフィードバックは平均して、男性へのフィードバックに比べて、口調も内容もポジティブなものだった。また、評価者にフィードバックを行う際の動機や目標を尋ねたところ、やはり女性を評価する時は、男性を評価する時と比べて、優しさを優先したと答える可能性が高かった。