会社の動向を注視する

 その会社で働いた経験があるからといって、新しい機会にふさわしい人材として選ばれるとは限らない。連絡を取り合っている人々や採用マネジャーとの会話の中で、会社の進展や成功を把握していることを示せば、ブーメラン社員になる可能性が高くなる。なぜなら、そのような知識を持たない候補者よりも、あなたのほうがオンボーディングに時間がかからないことがわかってもらえるからだ。

 下調べをしておけば、チャンスが来た時に備えることができる。上場企業なら、米証券取引委員会(SEC)のEDGAR(エドガー)システムにある10-Q(四半期報告書)や10-K(年次報告書)などの決算報告書から、その会社の状態や成功、そして課題を垣間見ることができる。また、会社やその新製品に関する最近の報道も確認したほうがよい。

スキルや能力を身につける

 新しい職場でスキルアップの方法を見つける。ハードスキルやソフトスキルを新たに身につけたことを示せば、前の会社に戻った時に、よりよいポジションで自分を高めることができる。

 まだ会社を辞めておらず、いつか戻りたいという気持ちがあるのなら、退社する前に業績評価をプリントして、自分の成長分野を調べておく。書かれていることすべてに同意できなくても、「2%ルール」を当てはめ、少なくとも2%は真実であると信じられると仮定してみよう。どうすればその認識を変えることができるだろう。キャリアアップを継続するために習得すべきハードスキルは何か、影響力やステークホルダーをマネジメントする能力、指導力を高めるのに役立つソフトスキルは何かを見極める。

なぜ退職したのか、なぜ戻りたいのかを考える

 あなたが会社を辞めた理由は何か、また、その状況がいまも続いているのかを深く掘り下げて理解する。たとえば、辞めた原因である悪い上司は他に移っていないか。戦略の変更に反対して退職したのであれば、いまならどう対処するだろう。大量解雇の対象になったのだとしたら、いま会社は安定しているか、人材獲得計画に慎重になっていて、自分は再び同じ状況に陥らないと確信できるだろうか。

 以前所属していた会社の人とコミュニケーションを取る時は、新しい会社がいかに自分に合わないかを語るべきではない。伝えるべきは、なぜ前社があなたにとって今後長く働く場所であるのか、だ。

 あなたが去った会社と、あなたが戻る会社は同じではないことを忘れてはいけない。組織は変わり、リーダーも目標も変わる。文化が変わることもある。自分が在籍していた時から会社がどう成長し、変化したのかを理解すれば、自分のスキルや能力が新しい仕事にどのような価値をもたらすことができるのかを伝えることができ、あなたが再び退社することはないと採用マネジャーを納得させることができる。

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 すでに前の会社を辞めていてそこに戻りたい人も、これから退社しようとしていて将来戻りたいかどうかわからない人も、どのように退職し、どのようにつながりを保つかを考えるべきだ。さらに重要なのは、前の職場で経験したトラウマを克服し、新しい機会を得るためにそこに戻ることになった時、穏やかな心で臨めるようにすることだ。そして、人生は直線的ではないということを心に留めておかなければならない。


“How to Quit - and Leave the Door Open to Coming Back,” HBR.org, January 31, 2023.