文化変容とそれによる事業への影響に注意を払う

 テクノロジーへの投資が実を結ぶようにしたいのであれば、企業文化に投資することを怠ってはならない。しかし、この点が見落とされているケースが非常に多い。今回の調査に回答した企業幹部の79.8%は、自社がデータドリブンの企業になることをじゃましている最大の要因として、テクノロジー面の障壁ではなく、文化面の障壁を挙げている。

 データの近代化、データプロダクト、AIおよび機械学習など、華やかなテクノロジーに積極的に投資している企業は多いが、その半面、データリテラシーを投資の最優先テーマとして挙げた企業幹部はたったの1.6%にすぎない。

 データドリブン企業になることを妨げる文化的障壁は、教育、コミュニケーション、ビジネスプロセス、社内での方向性のすり合わせ、社員のスキル開発、研修などのいくつかの要素、もしくはすべてが原因になって生まれる可能性がある。この点を考えると、規模の大きい組織が変化と変革を成し遂げるのは、けっして簡単なことではない。

 それでも、企業はさらに時間を費やし、関心を払い、さらには資金を投入して、データとアナリティクス、AIの活用に関する思考と発想、手法を転換すべきだろう。単にビジネス界のトレンドを後追いするだけではなく、自社のビジネスのあり方を本当に変えようと思うのであれば、それが不可欠だ。

実現可能性の乏しい難題に挑むより
まずは小さなことから始める

 データにアクセスしやすい状況をつくることを目指して、データウェアハウス、マスターデータ管理、クラウド移行など、テクノロジーのインフラに莫大な投資を行ったものの、投資に見合った価値を事業部門にもたらしていない──こうした状態に陥っている企業があまりに多い。これまでの経験から言うと、長い目で見てデータドリブンの組織づくりに最も成功するのは、小規模な取り組みから始めて、まずは目の前の成果を上げ、一歩ずつ土台を築くことに集中する企業だ。

 現代的なデータ環境を築くために投資することは、長期的な視点でインフラとプラットフォームを整備するうえでは賢明なことである。しかし、その過程において、データへの投資が事業部門に価値をもたらすことをそのつど示せなければ、データ部門のリーダーは、事業部門からの信用を失い、社内の協力を引き出せなくなりかねない。

 このようなパターンは、いままで多くの企業で繰り返されてきた。企業のCDOが短期間で交代したり、想定外の形で職を去ったりするケースがしばしば見られる理由も、ここにある。こうした状況下で、データ部門のリーダーは自滅するようなミスを犯すわけにいかないのだ。