あらゆる段階で
強力なパートナーとスポンサーを獲得する
これは専門性の高い分野すべてに当てはまることだが、データ、アナリティクス、AIの世界でも、「データメッシュ」や「データファブリクス」といった、さまざまな独特の用語が生まれている。これらの分野がどれほど大きな可能性を持っていようと、この類いの専門用語は、近寄りがたい雰囲気をつくり出し、ほかの部門のリーダーたちを遠ざけたり、データ部門に対する社内の信用を損なったりする場合が少なくない。データ関連の投資が事業部門に対して目に見える恩恵をただちに生み出せていない場合は、この傾向が特に強まる。
データ部門が事業部門に恩恵をもたらし、それを通じて信用の土台を築くことができなければ、新しい取り組みは失速し、推進派は社内の支持を失っていく。実際、この落とし穴にはまった企業の実例は数知れない。
データ部門のリーダーが成功を収めるケースでは、簡潔明瞭な言葉を使い、データへの投資のメリットを明確に示すことにより、自身を自社の組織にうまく溶け込ませている。ビジネス上の成果、成功、顧客の満足度について述べることにより、言い換えれば、事業部門のリーダーたちの言葉で語ることを通じて、社内の信用を獲得していくのだ。そうすることで、事業部門に強力な支持者を獲得し、その人たちと協働することが可能になる。
成功するCDOやCDAOたちは、事業部門の支持者たちと手を携えて、データ、アナリティクス、AI関連の能力を構築し、その直接の恩恵として、事業部門のために目に見える成果──顧客の増加、顧客の満足度の向上、新商品投入の成功、新市場への参入など──を生み出そうとする。このようなリーダーたちは、自社の事業の骨組みの中に自分をうまく織り込んでいるといえるだろう。
データ倫理を軽んじない
顧客はけっして忘れないのだから
最後に、自社がデータを倫理的に活用するための方針と慣行を確立し、それを社内に浸透させるための投資も大々的に行うべきだ。自社がデータ倫理に関する方針をしっかり確立していると答えた企業幹部は40.2%、自社が属している業界がそのための十分な措置を講じていると答えた企業幹部は23.8%にすぎない。しかし、この点に関心を払うことの重要性を指摘する専門家が増えている。
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企業がデータ、アナリティクス、AIを活用して、自社のビジネスのあり方を様変わりさせる機会は、至るところにある。いま、自社がそうした投資をどのように行っているかを再検討すべきだ。データ部門のリーダーは、事業部門に目覚ましい恩恵をもたらさなくてはならない。そのために、前進し、最近の教訓から学習する必要がある。
【注】
自社内にデータ重視の文化が築かれていると考えている企業幹部の割合の変化を正確に示すために、最初に掲載した英語版記事の記述を修正した。(2023年2月8日)
"Has Progress on Data, Analytics, and AI Stalled at Your Company?" HBR.org, January 30, 2023.