リテンションボーナスをより効果的に活用する

 ほとんどの組織において、リテンションボーナスは経営陣の裁量に委ねられている。ワード・オブ・ワークの調査では、正式なガイドラインや対象条件をあらかじめ設定している企業は3分の1以下にすぎない。主に上級職や代替が難しい職務(営業、IT、技術職など)に提示され、現金で一括払いされる。約4分の1の組織は、間隔を空けて定期的に支給したり、プロジェクトの目標達成時に支給したりしている。

 多くの契約にはクローバック条項があり、定められた期間内に退職した場合は支給されたボーナス(または比例配分した金額)を返還しなければならない。通常、勤続年数は受給資格の基準にならない。

 リテンションボーナスをより効果的に活用するために、専門家は次の4つのステップを提案している。

1. 戦略的に考える

 リテンションボーナスを提示するというのは、基本的に、従業員に何らかの期限を示すということだ。では、その従業員の退職リスクを高めているものは何か。リテンションボーナスを支給すればそのリスクは下がるのか。その効果をどのように判断するのか。

 たとえば、基本給が市場水準より低いために離職者が増えている場合、リテンションボーナスは解決策にならない。必要なのは基本給を上げることだ。あるいは、卓越した成果や努力を評価したいなら、1回限りのボーナスを支給すればいい。シニアエグゼクティブを引き留めたいなら、長期的に権利が確定する譲渡制限付き株式の付与を検討することが、キャッシュフロー上も理にかなっているかもしれない。

 リテンションボーナスは、短期的に人材が必要な場合に、成長と退職を抑制するための創造的な手段になりうる。「4カ月、6カ月といった具合に、段階的にボーナスを減らしていく方法もある」と、ダンカンは言う。

2. 対象条件を明確にして、管理職に導入のガイドラインを示す

 これは2つの理由で重要な戦略である。まず、ガバナンスを提示しない企業は、財務の透明性に関するリスクを抱えている可能性が高い。そして、ワールド・アット・ワークによると、リテンションボーナスを支給する企業の25%以上が経営陣の裁量に委ねており、計算方法を特定できないでいる。

 明確な方針を提示すれば、リテンションボーナスに対する企業のアプローチがより公平なものになる。経営陣の完全な裁量で何の監視もなければ、えこひいきや公平性、士気の面で問題を招くおそれがある。

3. 文書で提示する

 リテンションボーナスの資格取得日、支給規定、ボーナスの根拠などを文書化する。必要に応じて、対象となるプロジェクトの目標を定義する。クローバック条項や、正当な理由により解雇された場合は資格を喪失すること、請求権の放棄を条件とする支払いなどを含めるかどうかも検討する。正式な文書は、法律用語ではなく容易に理解できる表現にする。