生産性の高い企業に当てはまる4つの共通点
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サマリー:労働生産性を向上させるには、何が重要なのか。現在米国では、第2次世界大戦後、年平均2.2%を誇ってきた労働生産性の成長率が1.4%程度へと鈍化している。この状況を改善するには、生産性の低い後進企業が生産性を... もっと見る先進企業並みにすることが重要である。本稿では、生産性の高い企業に共通する4つの要素を紹介し、規模や業種を問わず、あらゆる企業が生産性を向上させるためのヒントを提供する。 閉じる

生産性の低い企業の改革で
米国の生産性は向上する

 第2次世界大戦後、労働生産性の向上が米国の経済と繁栄の原動力となってきた。だが、この15年間は、労働生産性の成長が鈍化し、年平均1.4%程度に留まっている。1948年以降の長期的な成長率2.2%に比べると、低い水準である。

 こうした小さな差は、積み重なることで大きな影響を及ぼす。もし米国の労働生産性が年平均2.2%の長期的なトレンドに戻ることができれば、2030年までに累積GDPで10兆ドルの価値を生み出せる可能性がある。それは米国が莫大な政府債務や、資金不足の社会保障政策、そして化石燃料から再生可能エネルギーへの転換といった長期的な課題へ対応する役に立つだろう。

 この奇跡のような生産性向上を実現するために、企業は重要な役割を果たすべきである。筆者らの研究では、どの業種でも、先進的な企業と後進企業(4分類した中で最も低いグループの企業群)の間には著しい生産性の差があることがわかった。特に製造業では、先進企業と後進企業の生産性に5.4倍もの開きがある。サービス業でも同様のトレンドがあることが研究者らによって明らかになっている。とりわけIT業界では、先進企業とそれ以外の企業の生産性の差が大きかった。

 各業種内で企業間の生産性の差が非常に大きいだけでなく、さらに拡大している。筆者らの研究では、製造業では、トップ企業と後進企業の生産性の差は、1989年から2019年までの30年で25%拡大した。これは先進企業の成長が加速している一方で、それ以外の企業の成長は停滞していることが原因だと、一部で指摘されている。実は、これは希望を与えてくれる結果といえる。後進企業の生産性が先進企業並みになれば、米国の生産性の伸びは、かつてのようなレベルに戻れるかもしれないのだから。

 生産性の差は、企業がさらに高い目標を掲げる余地があることも意味する。より少ない労力でより多くのことを成し遂げれば、あるいは同じ労力でより多くのことを成し遂げれば、企業の損益計算書には利益率の拡大と、より力強い収益の伸びとして表れる。それをすべて合わせれば、米国経済全体の生産性向上につながるだろう。

最も生産性の高い企業からの教訓

 業績を改善したい企業のリーダーは、最も生産性の高い企業の観察を通して学ぶことができる。こうした先駆的な企業は通常、他の企業よりも規模が大きい(ただし後述するように、すべてがそうとは限らない)。また、ほとんどの業種や地域をまたいで存在する。

 生産性の高い企業の戦略には、次の4つの共通点がある。

DXによる価値を取り込んでいる

 1989年から2019年にかけて、筆者らの研究では、ある業種における生産性の伸びとデジタル化のレベルの間に強力な相関関係があることがわかった。企業の生産性とデジタル化の間に同様の関係があることは、他の研究チームでも明らかになっている。つまり先進企業は、同業他社よりもうまく技術革新を遂げているのだ。

 ただ、多くの企業がテクノロジーに投資しているのに、十分な恩恵が得られていない。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、企業がデジタル・トランスフォーメーション(DX)投資から得られる価値は、期待された価値の25~30%程度だという。これは、企業戦略やビジネスモデルを適宜アップデートしていないため、デジタル技術の強みを十分活かせていないことに起因している。

 先進企業は、テクノロジーにより可能になる大胆なビジネス目標を掲げる。既存のやり方を拡張するのではなく、組織改革により業務のデジタル化を進めることで、テクノロジーの恩恵を最大化している。また、組織全体で、結果に対する説明責任を追求している。