このインタビューから、レジリエントな組織にはレジリエントなリーダーがいることが明確に浮かび上がる。個人のレジリエンスによって、迅速な意思決定や短期間での計画策定、課題が急速に変化する状況下でチームをサポートするのに必要な俊敏性がもたらされるのだ。

 石油・ガス機器メーカー社長のエベン・タイチュークは、「正直に言えば、ひどい考えを持ったこともあります。でも、いまは情熱であふれている。もちろん、戦争前の水準は維持できていないし、適応せざるをえないことも数多くある。でも、いまの状況を見れば、この先は大丈夫だと思います」と振り返る。

 筆者らがインタビューしたリーダーたちは、戦争がもたらしたトラウマから復活して、従業員への責任を果たすためのさまざまな対処法を教えてくれた。自分の思いをチーム内でオープンに共有する、趣味や友人との時間を確保する、ユーモアや楽観主義に意識的に目を向ける、といったものだ。

体験談2

 言わば「ウォー(戦争)・ライフ・バランス」。ミサイルが頭上を飛び交う中で、防空壕や地下室、浴室で仕事をする、電気もインターネットもなく、学校が休校だから、子どもたちはずっと家にいる……そんなストレスと不安は強烈だ。

 それでも、楽しい瞬間を見つけなければならない。仕事とボランティア、軍への協力、家族の世話を並列させる方法を探って、すべてをこなす必要がある。

 もちろん、我が社のリーダーシップチームは事業継続計画を立てていたが、実際にそれを使う日が来るとは思っていなかった。侵略直後の最初の課題は、従業員の物理的な安全を確保すること。多くの従業員をリビウに移動させた。リビウでも戦闘はあったが、事業は継続できた。第2の優先課題は、従業員への給与を確実に支払い続けることだった。

 驚いたことに、侵攻からわずか数日で、従業員の90%が職場に戻ってきた。彼らの献身的な働きは素晴らしく、おかげでクライアントの大半をつなぎとめることができた。クライアントも仕事をこなさなければならないからだ。

 もちろん、精神的につらい時もあった。戦争で父親を亡くした同僚もいれば、近親者が占領地で捕虜になった人もいた。兄弟が6カ月間投獄されており、いまどこにいて、いつ解放されるのかわからない人もいる。

 そうした話を聞いたり、解放された地域で行われた残虐行為の写真を見たりすると、誰もが大きな苦痛を感じ、そのような時はふだんのような生産性は期待できない。それでも私はリーダーとして、みずからの弱さをさらけ出して、ボランティア活動に参加することが、自分とチームを前進させるのに役立つと思っている。全員を完全に守ることは不可能であり、避けようのない不確定要素があることもわかっているが、最善を尽くして可能な限りのサポートを提供したい。

──リディヤ・ダッツ(リビウ)
テックマジック(ソフトウェアエンジニアリング企業)共同創業者兼HR部長