ファン・コントロールド・スポーツの次なる展開

 リーグ・オブ・レジェンドやドータ・ツー(Dota 2)など10種類以上の戦略ゲームに出場し、ゲーミングのエコシステム全体に及ぶコミュニティを築いたチームリキッドなど、他のeスポーツの組織の成功に刺激を受けたFCFは、他のスポーツへの進出も始めている。FCFの親会社であるファン・コントロールド・スポーツ&エンターテインメント(FCSE)は、ファンの声をバスケットボールにも届けるべく、2023年に、ファン・コントロールド・フープス(FCH)を発足する予定だ。

 FCHリーグは、コミュニティエンゲージメントを高めるために、実績のあるFCFの方針を多く採用する。従来のバスケットボールの標準となっている5人制をやめ、フリースローに代わり、ペナルティポイントやポゼッション(ボールの所有権)などの新ルールを導入する。試合は、アトランタにある全面インタラクティブなスマートLEDコートで行い、ゾーンや選手のライトアップ、パワーアップ、選手交代、統計などのゲーム情報を映し出すことが計画されている。

 FCSEは、スポーツのライブ配信にファンタジーやビデオゲームの要素を加え、確立された従来のスポーツリーグと融合させることによって、次世代のファンを獲得しようとしている。Web3上のリーグに限らず、おそらく従来のクラブやリーグの若いファンは、さらなるコントロールだけでなく、さらなるチャンスも求めている。そのため、スポーツファンは試合中、主導権を握ることが増え、実際のチームから賞金や移籍金における利益といったキャッシュフローに対する権利を得ることも可能になるだろう。

 このアプローチは、トークン(議決権、社員権)ホルダーを組織の経営や意思決定に参加させる新興DAO(分散型自律組織)に見られるように、ボトムアップの意思決定に対する需要の高まりにも応えるものである。

 FCFはさらに、仮想現実と物理現実を効果的に組み合わせることによる消費者価値の創造の方法も示している。消費者に大きな力を与えることは、最初は無謀なことに思えるかもしれない。しかし実際は企業の利益を最も重視している人に意思決定権を委譲することであり、最終的には、それがよりよい意思決定をもたらすのである。


"Lessons on Customer Engagement from Fan Controlled Football," HBR.org, March 09, 2023.