ここで有益なアドバイスを一つ。長年悩まされてきた問題に対処しようとする場合は、自分の行動を過剰に修正するくらいでよい。その後、速く進みすぎているというフィードバックを受ければ、その時点でスローダウンすればよい。そして、遅すぎるという指摘を受ければ、再び加速すればよいのだ。
自分の行動を変えられない場合は、その理由を説明しよう。スコットは以前、ある社員からこう指摘された。あなたは、会議で部下の話をさえぎって話しすぎる、と。そこで、次の会議でこの指摘について話題にし、その行動パターンは自分に染みついている悪癖で、すぐに改めることは不可能だと説明した。そして、自分の行動を改める手伝いをしてほしいと頼んだ。
具体的には、手首に輪ゴムをはめて会議に出席して、自分が他人の話をさえぎった時は手首の輪ゴムをパチンとしてほしいと頼んだ(チームのメンバーが笑いながら実際にその通りにすると、スコットはわかっていたのだ。あなたは、自分に適した方法を考えればよい)。
輪ゴムのおかげで、スコットは他人の話をさえぎることが減った。しかし、効果はそれだけではなかった。スコットがフィードバックに耳を傾けていることを目に見える形で示す効果もあったのだ。しかも、すぐに行動を改めることはできなくても、そのための努力をしていると伝えることができた。
リーダーがしばしば犯す過ちのなかで特に大きなものの一つは、じっくり検討した末に、フィードバックに従って行動することができないと判断した場合、そのまま何も言わないというものだ。人々は、リーダーに対するフィードバックを行った後、リーダーから何の反応もなければ、自分の指摘が黙殺されたと感じてしまう。
リーダーは、そのような態度を取るのではなく、このように述べたほうが格段に好ましい。「残念ですが、幹部チームがこの四半期に設定している優先課題に照らして考えると、◯◯は行うことができません。けれども、この件は常に頭に入れておきます」
6. 不満を吐き出すのではなく、フィードバックすることをチーム内で当たり前の行動にする
問題の原因を理解したり、問題を解決しようしたりせず、単に同じ問題を繰り返し非難し、不満を吐き出してばかりいると、あなたもチームのメンバーもますます気持ちが沈みかねない。それは、問題から何を学ぶべきか、どこを改めるべきかに目を向けず、不満を感じている事柄を繰り返し話題にすることにより、脳内にその問題をより深く刻み込んでしまう結果だ。
それに輪をかけてよくないのは、ある人が誰かにフィードバックを行うことを安全と感じられず、代わりに第三者に不満を吐き出すというパターンだ。この場合、不満を感じている人物は、一時的にいくらか気分がよくなるかもしれないが、長い目で見れば問題はまったく解決しない。不満の対象になっている人物は、自分の行動が不満を招いていることを知らないままだからだ。
誰かがあなたに対して、その場にいない人物についての不満を述べた場合、あなたとしては、自分が相手の身になって話を聞いてあげていると感じるかもしれない。しかし、この時あなたが実際にやっていることは、社内政治をかき回すことにほかならない。自分が話を聞いてあげるのではなく、不満の対象である人物に直接話すよう促すべきだ。
仲裁者の役割を買って出るのはかまわないが、その際は、双方が同席することを条件にしよう。ただし、言うまでもなく例外はある。あなたに相談してきた人物が、いじめやハラスメントの被害に遭っている場合は、問題の人物と直接話して解決するよう勧めるべきではない。
フィードバックを行うことをチーム内で当たり前の行動にしよう。そうすれば、第三者に不満を吐き出すのではなく、不満の対象である人物にフィードバックを直接行っても安全だと感じられるようになる。まずは、フィードバックを歓迎する姿勢を育むことから始めればよい。誰もが自分へのフィードバックを引き出そうとすれば、フィードバックを行った場合に、素直に耳を傾けてもらいやすくなるだろう。
* * *
不確実性の高い状況では、厳しい指摘を受けたくないと考えても無理はない。しかし、チームが安定し、組織が成功できるかどうかは、リーダーが自分の問題点をどれくらい認識できるかに大きく左右される。身を縮めて試練をやり過ごそうとするのは、けっして安全な方策ではない。破滅に至る共感や、うわべだけの調和を重んじる文化は、成功をもたらさない。それよりも重要なのは、自分に対する批判を引き出すことなのだ。
"How Leaders Can Get the Feedback They Need to Grow," HBR.org, March 10, 2023.