
部下から「徹底的なホンネ」を引き出す6つのコツ
今日のように不確実性が高まっている時代には、
その点、実際の行動につながりやすい明快なフィードバックを引き出せれば、リーダーは、より多くの情報に基づいて、より質の高い意思決定を行い、(必要であれば)方向転換することが可能になる。
また、リーダーが自分に対するフィードバックを求めることには、信頼と透明性を重んじる組織文化を育む効果も期待できる。ただでさえ膨大な量の業務に忙殺されているチームのメンバーたちは、景気後退の懸念が高まるなかで、より多くのことをより少ない資源で行うことを求められている。そのような状況にあっても、社員は、自分の意見が尊重されていると思えれば、ロイヤルティとエンゲージメントと生産性を維持しやすい。それに、社員が懸念材料や提案などの有益な情報をもたらす可能性も高まる。
問題は、不確実性の高い状況においては、率直なフィードバックを引き出すことがひときわ難しいということだ。人々が不安を感じていたり、自分の職が脅かされていると思っていたりすると、どうしても言葉を発することに腰が引ける。とりわけ、マネジャーに対してものを言うことに臆してしまう。
一般的に組織での地位が高くなればなるほど、改善すべき点を指摘してくれるフィードバックを受け取る機会が少なくなる。ところが、ジャック・ゼンガーとジョセフ・フォークマンの2014年の研究によると、改善すべき点を指摘するフィードバックとポジティブなフィードバックを比較した場合、前者のほうがパフォーマンスを向上させる効果が大きいと考える人は、後者のほうがその効果が大きいと考える人の3倍に達している。
つまり、リーダーが自分のパフォーマンスについての正確な評価を知ることは、その必要性が最も大きい時ほど、難しいのだ。では、まわりの人たちがフィードバックを提供してくれそうにない時、どのようにしてフィードバックを引き出せばよいのか。どうすれば、実際の行動につながりやすい有益なアドバイスを部下から得ることができるのか。
誰だって、厳しい会話はしたくない。けれども、リーダーの地位にある以上は、そうした消極的な気持ちを克服し、さらにはほかの人たちもそのような気持ちを克服できるように助けなくてはならない。
いつ、どのようにしてフィードバックを求めるべきかを知っておくことは、学習によって身につけられるスキルだ。有益な批判を受けた際に、防御反応を示すこと(そうした反応自体はごく自然なものだ)を避けるスキルについても同じことが言える。
本稿では、筆者らのこれまでの著作と研究を基に、フィードバックを求めたいリーダーが具体的にどのようなステップで行動すればよいかをまとめた。最初にすべきなのは、自分を批判してほしいと伝えることだ。管理職の人にとって、その重要性はとりわけ大きい。しかし、それを実践することは容易でない。場合によっては、過酷な感情の旅路を歩まなくてはならない。そこで、以下に、部下から「徹底的なホンネ」(Radical Candor)を引き出すための6つのコツを紹介しよう。

1. 普段から「ネガティブ」な感情を受け入れる
自分の至らぬ点を指摘されるのは、たいてい気持ちのよいことではない。まず、次のように自分に問い掛けよう。週に何回くらい、一緒に働いている人たちがあなたを不安にさせたり、動揺させたり、さらには弁解がましく振る舞わせたりするような発言をするだろうか。一緒に働いている人たちは、どの程度の頻度で、あなたの気分をよくさせるようなことを述べるだろうか。
もし、気分がよくなるような賛辞ばかりを聞かされていて、耳の痛い批判をまったく聞かされていないとすれば、危機感を持ったほうがよい。その場合、あなたは本当のことを聞かされていないからだ。まわりの人たちに自分を批判してもらうように、もっと努力するべきだ。
「徹底的なホンネ」を引き出すうえでは、「よいニュースはニュースにならない」こと、「ニュースがないことは悪いニュースである」こと、「悪いニュースはよいニュースである」ことを肝に銘じておこう。
以前、筆者のひとりであるフォスリエンの元マネジャーの一人がこう述べたことがある。「あなたのことを本当に大切に思っている人は、口のまわりに食べかすがついていれば教えてくれる。それ以外の人たちは、何も言わない。居心地悪い思いをしたくないからです」。自分に対する批判の言葉を聞けば、その時はつらい。しかし、長い目で見て自分の行動を改善するためには、そうした厳しい指摘が不可欠だ。それに、時間が経つにつれて、次第に痛みも感じなくなる。
2. 「お約束の問い」を用意する
自分の欠点についてまわりの人たちに単刀直入に尋ねるのは、ばつが悪い。それに、不確実性が高い時期には、尋ねられた側も、
・問いは、イエス、ノーで答えられるものであってはならない。また「いや、万事問題ありませんよ」
本稿の筆者であるフォスリエンとダフィーが好ましいと考えるのは、「あなたをサポートするために、私にできることを一つ教えてください」といった問いだ。「一つ」だけ教えてほしいということにより、実際の行動につながりやすい具体的な返答が戻ってくる可能性が高まる。
・問いは、あなたらしいもの、あなたが自然に発するようなものであるべきだ。筆者のスコットが好んで発する問いは、「私と一緒に働きやすいと感じてもらえる状況をつくるために、私ができること、私がやめたほうがよいことは何でしょうか」というものだ。もっとも、この通りの言葉でなくてもよい。自分にとって自然な言葉を見つけよう。
・問いは、相手に合わせたものであるべきだ。スコットと一緒にラディカル・キャンダーを設立したジェーソン・ロソフは、スコットが発していた「お約束の問い」が好きではないと述べた。そこで、スコットは、もっと具体的な問いを投げ掛けることにした。
部下との個人面談では、