
コロナ禍で学んだことを制度化するための3ステップ
ボストン コンサルティング グループ(BCG)の調査によれば、危機下の80%以上の期間において、業界平均を上回るパフォーマンスを上げていた企業が15%ある。たとえば、バークシャーハサウェイは、過去に17四半期あった混乱期のうち、15四半期において、業界平均を上回るパフォーマンスを上げている。
このように一貫して高業績を維持できるのは、これらの企業がレジリエンスを培ってきたからである。行き当たりばったりの策や、特定のシナリオに限られた守り、あるいは個人のパフォーマンスに頼るのではなく、逆境を乗り越えて成功する能力を築いてきたからだ。言い換えれば、レジリエンスを「制度化」したのである。
新型コロナウイルス感染症の流行が始まって3年が経ったいま、世界中の経営者が先へ進もうとしている。しかし、コロナ禍で学んだことを体系的に制度化している企業は少ない。そこで、それを実践するための3つのステップを提案したい。
第1ステップ:評価
最初のステップは、コロナ禍における自社の業績を経験的に振り返ることである。評価には以下の項目が含まれる。
競合他社とパフォーマンスを比較する
工場の稼働率や製品の供給状況といった財務上や業務上の指標について振り返ることも重要だが、同業他社と比較してどうだったのかは、業績評価の際に見落とされがちである。自社の売上高、収益性、株主総利回り(TSR)を他社と比較する。
長期的なパフォーマンスを検証する
危機下において相対的に高パフォーマンスを構成する要素は以下の通り3つある。
・危機の最初の衝撃をどれだけ吸収できるか。脅威を想定し、認識し、備えている企業は、衝撃の初期の影響を低減する「衝撃吸収力」という優位性を備えている。このことが顧客、提携先、投資家に対する、安定感と信頼感となり、機会の創出につながる。コロナ禍の最初のインパクトを測定するには、コロナ禍前の業績と2020年第1四半期などの業績とを比較する。
・どれだけ早く回復するか。事業を立て直すために必要なことを素早く特定し、実行する企業には、「適応力」という優位性がある。業務上の柔軟性を活かしたり、ポートフォリオの構成を変えたりして、早く回復できる。回復スピードを測定する一つの方法は、コロナ禍以前の業績水準に戻るまでに要した期間を見ることである。
・回復の力強さ。適応力で優位に立つ企業は、「環境形成力」でも優位に立つ場合が多く、それによってライバルよりも回復が力強い。なぜなら、需要構造の変化をプラスに活かし、危機後の競争のルールを書き換えるからである。回復の力強さは、コロナ禍以前の業績と、業績指標が安定した後の新たな水準とを比較することで確認できる。
全社平均だけでなく、チームごとの業績を見る
プラス面かマイナス面かにかかわらず、教訓を導き出すには、会社全体の業績を競合他社と比較するだけでなく、ビジネスユニットや部署ごとの業績を見ることも重要である。
このようなデータ収集と分析によって、展開して制度化すべき卓越した領域と、対処を要する弱い領域とが特定できる。たとえば、動物用医薬品大手ゾエティスは、この評価を通して、自社が競合他社の2倍近い成長率を達成した。その要因は、有望な市場や製品セグメントに資本を迅速に再配分できたことにあったと気づいた。このように自社の強みを見極めたことは、ゾエティスが高業績を再現可能なものにするために、不可欠なステップだったのである。