営業のシステムと文化の変革
デジタルのバックボーンは不可欠だが、それだけで十分なわけではない。B2Bにおける優れた顧客体験のために必要なのは、役割、成功の意味、営業マネジメント慣行に支えられ、根強く残る営業のマインドセットを変えることである。
成功する営業担当者の典型的な特徴は、これからも残り続けることは間違いない。好奇心や共感力、粘り強さ、顧客と商品の知識、営業のスキルは当然必要だ。知識のある買い手は「しゃべるパンフレットやウェブサイト」や御用聞き以上のものを求めている。営業担当者は顧客のニーズを予測し、協働し、デジタルチャネルや分析を活用して、常に変化に適応しなければならない。
マイクロソフトのアカウントエグゼクティブ(AE)は、クラウドインフラのソリューションをユニコーン企業に販売している。彼らは何十社ものユニコーン企業と仕事をした経験から、顧客のニーズや機会、ペインポイントを予測するのにうってつけの立場にいる。AEはマイクロソフト社内の他の商品やソリューションのスペシャリストを引き入れて、見解の異なる意思決定者間の調整をすることができる。彼らは顧客のニーズを予測して、優れた顧客体験を提供している。
営業担当者とデジタルチャネルが共存するためには、マインドセットと能力の両面で成功することが必要だ。多くの営業担当者が、顧客との関係を支配することへの願望を過去からずっと引きずっており、彼らは営業のノウハウは自分だけのもので、チームのメンバーとは共有できないと思っている。
新しい顧客体験の世界で必要なのは、透明性と信頼性である。最も優秀な営業担当者は、新しいマインドセットと、デジタルチャネルを活用して共存する能力を兼ね備えている。さらに彼らはデジタルデータから得た知見を伝えて顧客に価値をもたらすが、そうした知見はAIシステム由来のものがますます増えている。2025年にはデジタルネイティブ世代が労働力の75%以上を占めるようになり、そのうえ、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが職場におけるテクノロジーの採用を加速したため、新しいマインドセットと能力が急速に定着しつつある。
最後に、営業担当者にとって適応力は常に重要な資質であるが、いまは新たな局面を迎えている。斬新で複雑な商品は、対面販売のほうがメリットが大きい。買い手に商品の知識が蓄積してきたら、バーチャルチャネルやデジタルチャネルで販売するのがベストかもしれない。同じ販売サイクルの中でも、意思決定者は最初に対面で会うことを希望し、その後の購入段階ではバーチャルチャネルでつながり、反復購入の際にはデジタルチャネルを使うことがある。
肯定的な顧客体験を創出するには、営業担当者は買い手の知識と好みに関する流動性に対応する必要がある。同時に売り手は、営業担当者が顧客関係についての支配を手放さなければならない時に生じうる摩擦に対処しなければならない。