CXを測定する:唯一万能の指標はない
自社と顧客の目標を反映した適切な測定指標を設けなければ、CXの取り組みに説得力があると明言することはできない。
CXの指標にはいくつかの用途がある。過去の投資の根拠を示すため、顧客体験が改善されたか否かを確認するため、今後の改善に向けて目標とターゲットを設定するため、是正措置が必要な場合に介入するためなどだ。実際には、組織はたいてい数十のCX指標を使い、同じ組み合わせを用いる組織はない。
成果を判断するために一つの測定指標に頼ると、うまくいかない。顧客のニーズと期待ではなく、スコアに基づいて管理してしまう可能性があるからだ。よりよい戦略は、マーケティング、IT、顧客サービス、製品開発における主要な役割、および関連するCXの優先事項と連動するさまざまな指標を用いることである。これにより、組織は顧客の行動と認識について、より正確かつ実行可能な形で把握できる。
以下は、CXを測定するために必要不可欠な5つの指標である。
1. 顧客満足度(CSAT):最も古く、最も広く使われているCX指標。
2. 顧客ロイヤルティプログラムへの参加率や定着率:顧客は自社と関わり合うことにどれほどの価値を見出しているのかを示す、重要な指標。
3. ネット・プロモーター・スコア(NPS):顧客関係の状態を示す、広く使われているバロメーター。
4. 従業員エンゲージメント:顧客体験における従業員の役割を評価する指標。
5. カスタマー・エフォート・スコア(CES):自社が本当に取引しやすい企業かどうかを、より正確に測定する指標。
デジタルの顧客体験を測定する方法は一つではない。カスタマージャーニーに沿って、顧客のさまざまなシグナルを収集するのが最善のアプローチだ。
説得力のある顧客体験の創出は、物理的かデジタルか、またはその両方かを問わず、顧客への深い理解から始まる。顧客を十分に理解すれば、たとえ些細な方法であっても、より深いレベルでつながりを築くことができる。顧客、そして従業員は、体験において何を求めているのか。このことについて、自分の思い込みを疑うよう努めなくてはならない。
卓越した顧客体験の創出において重要なのは、自社の顧客に関するすべての詳細を知ることではなく、顧客が何をするのか、その理由は何かを知ることだ。顧客の成功と自信を後押しする方法を自社は理解しているという事実を、カスタマージャーニーの重要な場面で実証すべきである。
重要なのはテクノロジーではなく、コンテキスト(状況や事情)だ。ビジネスリーダーは、コンテキストを変化させる影響力を持っている。
"Using Technology to Create a Better Customer Experience," HBR.org, March 17, 2023.