ロボットは人間の代わりではなく、同僚と位置づける

 ロボットをサービスの最前線に投入すると、人間のスタッフは、業務負担が軽減されることを期待する一方で、脅威も感じずにいられない。人間のスタッフとしては、ロボットが職場にやって来れば、単調な作業が減り、悪質な顧客と対峙することも少なくなるだろうと思う半面、ロボットの機能に疑念を持ったり、ロボットの機能が高いために自分たちの職を奪われるのではないかとおそれたりする可能性もあるのだ。

 新しいテクノロジーを導入する時は、人間のスタッフが今後も欠かせない存在であり続けることをはっきり伝えよう。たとえば、人間のスタッフは、顧客に対してロボットが人間らしい存在であることを認識してもらう役割を担う。人間のスタッフが「私の新しいロボット同僚のジェニファーにはもう会いましたか」などと顧客に話しかければ、ロボットがしっかり機能を果たせることを保証し、ロボットがうまく機能しない場合にはそのスタッフが駆けつけてくれるのだろうと安心させることができる。

 それに、スタッフがロボットと違和感なくやり取りしている所を見せれば、顧客にお手本を示す効果もある。そのようなお手本がなければ、顧客はロボットに対して懐疑的になりかねない。

 人間のスタッフがロボットと一緒に働くことへの抵抗感を抑えるために、マネジャーがスタッフに伝えるべきことがある。それは、ロボットを導入することの狙いは、人間の働き手とロボットを入れ替えることではない、ということだ。目的はあくまでも、ロボットと人間を組み合わせて、最良の顧客体験をつくり出すことにあるのだと明確に示そう。

 そのためには、ロボットの機能と技術的限界をわかりやすく説明し、テクノロジーの研修と専門知識の習得を促すための報奨制度を設ければよい。加えて、サービスの現場にロボットが導入されることにより、スタッフが特に骨の折れる業務と不快な顧客から解放される可能性があること、そして、ロボットと関わることが楽しい経験になるかもしれないことも伝えるべきだ。

 ロボットは、スーパーマーケットのレジ業務やホテルのフロント業務など、標準化されている定型的業務の一部を人間の代わりに担うようになるだろう。しかし、人間の性質は多様で複雑だ。そのようなタイプのサービスでも、人間の関与が引き続き求められる可能性が高い。その点、単調な業務や悪質な顧客への対応をロボットに任せられるようになり、これまでより仕事が楽しくなると思えれば、スタッフはサービスロボットを歓迎し、次回のオフィスパーティにロボットも招こうと思うかもしれない。

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 サービスロボットは、まだ歴史の浅いテクノロジーだ。もしかすると、顧客とのやり取り以外に、思いがけない恩恵が生まれる可能性もある。前出の2021年の『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』誌の論文の共著者の一人である経営学者でジョージア大学テリー・カレッジ・オブ・ビジネス助教授のポク・マン・タンによれば、まだ研究の初期段階ではあるものの、擬人化されたサービスロボットとやり取りする経験を通じて、顧客がダイバーシティ(多様性)を──それまでの常識から外れた新しい商品と、マイノリティのサービススタッフを──受け入れることに前向きになるというデータもあるという。

 ここまでの議論をまとめると、顧客サービスの現場でロボットが歓迎され続けるかどうかは、そのテクノロジーの対人関係スキルと人間らしさ(ただし、人間らしさが過剰でも過小でもいけない)と機能性、そして人間の側(顧客と同僚の両方)の受容の度合いにかかっている。

 ロボットテクノロジーは、単にもの珍しい要素として既存のサービスに付け足すのではなく、顧客に、そしてサポート役を担う人間のスタッフに価値をもたらせるように留意して、注意深く導入すべきだ。その際は、自動化を推進することと、人間との関わりを維持することの間で、適度なバランスを取ることを忘れてはならない。


"Robots Are Changing the Face of Customer Service," HBR.org, March 22, 2023.