目新しさの提供だけでなく、機能を果たすように設計する
米国では最近ようやく普及し始めたばかりだが、アジアの国々ではサービスロボットがさらに普及している。アジアのホテルを利用した宿泊客によるオンライン上のレーティング評価を分析した研究によると、サービスロボットと接する経験は、おおむねポジティブな感情的反応を引き出すようだ。宿泊客はたいてい、擬人化された「かわいらしい」ロボットに出迎えられると、喜ばしく感じるし、ロボットがルームサービスを部屋に運んでくると、
もの珍しさは、顧客がサービスロボットに対してどのような印象を持つかを大きく左右する要素のひとつだ。しかし、あらゆるレジやフロントにロボットが導入されるようになった場合にも、顧客はロボットによるサービスに満足感を持ち続けるのだろうか。その点、研究によると、ロボットに好ましい印象を抱いたホテルの宿泊客たちは、ロボットの目新しさだけでなく、実務上の機能も気に入っていた。
機能性は、人間とロボットの関わりにおいて飛び抜けて重要な要素であり、顧客体験の質に最も大きな影響を及ぼす要素だ。サービスの現場にロボットを投入すると、
この点は、私たちのセルフレジの利用経験を振り返ればわかりやすい。セルフレジは、効率を高めてコストを削減することを目的に導入された。ウォルマートやサムズ・クラブやパネラ・ブレッドなどの小売り大手は、有人レジを全面的にセルフレジに置き換えている。しかし、セルフレジが至る所に出現するようになると、次第に消費者の反発が強まるようになった。テクノロジーを用いる際に感じるいら立ちと、レジ係による袋詰めなど、さまざまなサービスがなくなったことへの不満が原因だ。
ありきたりの内容の問い合わせを大量に受けるコールセンターでは、チャット機能と自動システムが導入されるようになって久しい。また、2018年のHBRの論文(邦訳「コラボレーティブ・
しかし、人間のサービススタッフが悪質な顧客への対応だけを行うことは好ましくない。スタッフが燃え尽き状態になり、退職率が上昇するおそれがある。理想は、サービスロボットが人間のスタッフを守る役割を果たすことだ。言ってみればロボットに「用心棒」役を担わせて、スタッフに暴言を吐いたり、侮辱的なことを述べたりする顧客との接触を回避できるようにするのである。テクノロジーをうまく活用できなかったり、テクノロジーに不安を感じていたりする顧客と、悪質な顧客を識別する機能を持っているロボットが職場にやって来れば、人間の働き手たちはロボットを同僚として歓迎するだろう。
サービスロボットがさらに普及して、私たちの日々の生活に入り込むようになると、目新しさは次第になくなっていく。顧客サービスの現場でロボットが長く成功を収め続けるようにするためには、ロボットの恩恵を活かすことと、ロボットに人間的な要素を持たせることのバランスを取ることが重要になる。
ロボットを顧客層と顧客ニーズに合わせたものにする
擬人化されていて、しかも高い機能を持ったロボットを用意できても、それだけではまだ不十分だ。ロボットとやり取りすることを顧客層が受け入れなくてはならない。そのためには、心理面と技術面での準備が必要となる。しかし、アジアの国々では以前からヒト型ロボットが浸透しているが、米国ではまだ顧客の抵抗感が強いのが現実だ。
あなたの会社は、サービスロボットを導入するのに適した条件が整っているだろうか。人間的な温かみと信頼関係、そして問題解決など、高度にカスタマイズされたサービスが求められる業種は、サービスロボットを導入するのに好ましい環境とはいえないだろう。それよりも、サービスが標準化されていて、自動化されている業種のほうがロボットの導入に適している。店舗のレジ業務や、ホテルのチェックイン業務と雑用業務などがそうだ。
しかし、自社が提供しているサービスの性格だけでなく、顧客層の性格も無視できない。顧客とロボットのやり取りがうまくいくためには、顧客がロボットと接することへの自信と意欲の両方を持っていることが重要だ。ホテルの現場ではコンシェルジュロボットが大きな成功を収めているが、高価格帯の宿泊客は、ロボットが部屋にタオルを届けに来ることによい顔をせず、人間の声と顔があるサービスを望むかもしれない。
属性別に見ると、ロボットを受け入れることに最も自信を持っていて、最も前向きなのは、若者と男性だ。それ以外の人たちは、ロボットとやり取りすることに自信を持てなかったり、ロボットが役に立たないのではないかと思っていたりする。ロボットが有益な存在ではなく迷惑な存在と感じられてしまうおそれがあるのは、どのようなケースか。企業はこの点も考えておくべきだ。
顧客とロボットのやり取りをマネジメントするには、人間のスタッフが欠かせない。必要に応じて、顧客がロボットとやり取りするのを手伝う人物を用意しておくべきだ。スーパーマーケットのセルフレジのように反発を買いたくなければ、すべてを顧客に押しつけて、人間によるサービスを完全に廃止することは避けたほうがよい。ロボットと人間の組み合わせこそ、最高のサービスチームなのだ。