ビジネスリーダーが今後考えるべきこと

 さまざまなことが起こっている。企業の社会的役割を果たしていくことは、現代における大きな経営課題の一つだ。ビジネスリーダーは細心の注意を向け、3つの教訓を肝に銘じたい。

大きな声のために、ビジネスの本質を見失わないようにする

 ESG投資に対する批判者が声を高める中、保守的な地域の中にも、それに反発する投資家がいる。ケンタッキー州とノースダコタ州の年金基金幹部は、ESGを支持する金融機関から資金を引き揚げることはないと述べている。また、インディアナ州とネブラスカ州の銀行協会は、ESG評価基準を採用している金融機関から資金を引き揚げることを強制する共和党の法案に反対する運動を行っている。

 反ESG法に反対している銀行は、慈善活動で勲章を得ようとしているわけではなく、ビジネスとして正しい「グッドビジネス」だからそうしているのだ。環境、社会問題は企業に大きな影響を与えるため、投資家はそれを考慮することが法律で義務づけられている。ケンタッキー州の年金管理者は、ブラックロックの商品に投資しないことは「受託者義務に反する」と述べている。これを裏付ける数字には説得力がある。ペンシルベニア大学ウォートン校の調査によると、テキサス州では、反ESG法により、地方債の利払いが増加し、5億3200万ドルの損失が生じたと推定されている。もし各州がこのような法律を受け入れ、納税者に何億ドルもの負担を強いる可能性があるとすれば、年金受給者は納得しないだろう。

 また、投資家がESG商品やサービスを提供し続けなければならないのは、顧客が求めるからこそである。たとえば筆者は数年前、ある大手銀行が富裕層の顧客を対象に行った会議で講演したことがある。その会議を主催した銀行のウェルスマネジメントのグローバル責任者は、超富裕層の顧客を前に、「世界中の顧客を調査したところ、インパクト投資とESGを求める声が一番多かった」と話していた。これは近年見られる、投資利益の最大化、社会貢献、ファミリー財団の計画といった従来の投資目的からの驚くべき変化である。

 顧客ニーズを優先して反ESGの圧力を無視しなければならないのは、金融に限らない。消費財メーカーや食品メーカーは、持続可能な選択肢を求める多様な顧客層のために製品を開発し販売することで利益を得ている。また、薬局大手に話を戻すと、リプロダクティブヘルスケアに関して州議会に屈することは、関連製品を求める人々の大きな市場を放棄することを意味する。

 要するに、メディア露出を高め、大統領候補の座を狙っている政治家が、経済やあなたの企業利益を優先することはないということだ。自社の利益、ビジネスモデル、顧客を脅かすような政治家と付き合う必要はないのである。