生成AIを適切にビジネスで活用するためのフレームワーク
Illustration by Mark Harris
サマリー:チャットGPTをはじめとする生成AIがもたらす影響は、まだ明らかではなく、研究者の意見も大きく分かれている。しかし、そうした中でも多くの企業は、すでに生成AIを応用する方法を模索している。そこで本稿は、生成A... もっと見るIに関する両極端な議論に終止符を打ち、このテクノロジーがまずどの領域に影響を与えるのか、2×2のマトリックスを用いて明らかにする。 閉じる

生成AIが最初に影響を与える領域

 ここ数カ月、オープンAIのチャットGPT、グーグルのバード、アンソロピックのクロード、メタ・プラットフォームズのLLaMA、そして最も新しいGPT4など、大規模言語モデル(LLM)がもたらす影響について、誇大な喧伝と憶測が多く飛び交っている。特にチャットGPTは、2カ月で1億人のユーザーを獲得し、史上最も急成長を遂げた消費者向けアプリケーションとなった。

 LLMが及ぼす影響はまだ明らかではなく、意見も大きく分かれている。多くの専門家は、影響はほぼない(初期の学術研究ではLLMの能力は形式的な言語能力に限定されると示唆している)、あるいは無限に近い量のテキストベースの訓練データでさえまだ大きな制約があると論じている。

 一方で、逆の主張をする人もおり、ペンシルバニア大学ウォートンスクール准教授のイーサン・モリックはこう指摘している。「この変化の重要性を理解していち早く行動を起こす企業は、大きな優位を得るだろう」

 現在わかっていることは、生成AI(人工知能)が広く人々の想像をかき立て、ほぼ瞬時に最初の草稿を作成し、アイデアを生み出せるということだ。また、正確さに難点があることもわかっている。

 この新しいテクノロジーには議論の余地があるにもかかわらず、企業はいま、それを応用する方法を模索している。両極端な議論や誇大な喧伝、誇張に終止符を打ち、このテクノロジーがまずどの領域に影響を与えるのか、明らかにする方法はないか。筆者らは、そうした方法があると考えている。

リスクと需要

 生成AIのリスクについては、真実でないものや不正確なものが生成され、拡散する可能性はどれほどあり、どの程度の損害を与えるのか、という点が挙げられる。一方、需要については、現在の話題性だけでなく、この種のアウトプットに対する現実的かつ持続的なニーズは何か、という点がある。

 これらの不確定要素を一緒に考えることが重要になる。2×2のマトリックスを使うと、今後の可能性について、画一的ではない詳細な分析ができる。実際には、リスクと需要は業界や事業内容によって異なるが、業界を超えて共通する一般的なユースケースを示したのが、下の図表だ。

 あなたの事業や業界は、どこに位置するだろうか。あなたのユースケースにおいて、人間による検証のステップを導入することで、リスクはどの程度軽減されるか。プロセスを遅らせ、需要を減らす可能性はどの程度あるのか。

 エラーの影響が比較的小さく、市場の需要が高い左上の象限は、必然的により速く、さらに発展する。これらのユースケースに対しては、企業が解決策を見出す動機がすでにあり、成功のハードルも低い。手を加えずすぐに使える技術だけでなく、生成AIとそのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を特定の領域に活用するサードパーティツールの組み合わせも期待できるはずだ。