マーケティングの分野ではすでにそれが実現しており、スタートアップの中にはコンテンツマーケティングのコピーやアイデアを生み出すために、LLMを応用する革新的な方法を見つけ、ユニコーンとなった企業も複数存在する。
マーケティングでは、アイデアの創出やイテレーション(反復)、特定のオーディエンスに合わせたメッセージの作成、オーディエンスを魅了し、影響を与えるテキストリッチなメッセージの作成が必要となる。つまり、明確な用途と確かな需要がある。重要なのは、
マトリックスを見ると、あまり注目されていない領域もあることがわかる。たとえば学習だ。マーケティングと同様に、社内学習ツールのような学習のためのコンテンツを作成するには、オーディエンスの興味を明確に理解し、魅力的で効果的な文章を作成しなければならない。また、生成AIツールのガイドとして使えるコンテンツもあるだろう。既存のドキュメントを使用して、さまざまな対象者に対応したり、さまざまな文脈に適応したりするために、手持ちの教材を書き換え、統合し、更新するよう依頼することができる。
生成AIの能力によって、学習教材は、日常業務の中に織り込まれたり、役に立たないFAQや膨れ上がったナレッジセンター、発券システムに取って代わったりと、これまでとは異なる形で提供されるようになるかもしれない。オープンAIの株式の49%を保有するマイクロソフトは、すでにこれに取り組んでおり、2023年中に一連の発表を予定している。
図表の「高需要・低リスク」の象限にある他の用途も、同様の論理が当てはまる。人が関与することが多く、AIが事実を歪曲するリスクが低いタスクだ。たとえば、AIに文章の校閲を依頼する場合、原稿を提示し、指示をいくつか出し、提案されたものを確認することできる。たとえば、さらに詳しくする、もっと柔らかい口調にする、5つのポイントにまとめる、より簡潔な文章にするなどといった指示だ。
このテクノロジーは、他者の視点としてもいますぐ活用できる。最近のマルチメディアデザイナーを雇う手順や、電車好きの4歳児の誕生日に何を買うかなど、ブレインストーミングの材料となるアイデアがほしい場合、そうしたアイデアは最終製品にはない可能性が高い。そのため、生成AIは迅速で信頼性が高く、安全な選択肢になるだろう。
上記の2×2マトリックスに、あなたの会社やチームのタスクを記入すれば、類似性を導き出すことができる。リスクと需要を評価し、特定のタスクに共通する要素を考慮することで、有益な出発点がわかり、関連性をとらえて機会を見出すのに役立つ。また、時間やリソースを投入する意味がないものを確認することができる。
他の3つの象限は、生成AIツールの用途を急いで見つけるべきものではない。需要が低いと、その技術を活用したり開発したりする動機が乏しくなる。シェークスピア作品の海賊のスタイルで俳句をつくることは、いまは楽しく、驚かされるかもしれないが、そうした「パーティ芸」程度のものは、人々の関心を長く保つことはできない。
また、需要があってもリスクが高いと、世間の不安や規制が進歩のペースを遅らせるだろう。自分の2×2マトリックスを考えてみると、ここに挙げた用途については当分の間、脇に置いておくことができる。
低リスクでもリスクに変わりはない
小さな注意点として、上記に挙げたようなリスクが低い企業内学習であっても、リスクはある。生成AIは、人間と同じようにバイアスやエラーの影響を受けやすいことに変わりはない。生成AIシステムのアウトプットに問題がないと考え、すぐに全従業員に提供してしまうのは、リスクが大きい。スピードと質の適切なバランスを取る能力が試されるだろう。
最初のアウトプットは最初のイテレーションとしてとらえるべきだ。そのうえで、より詳細なプロンプト(指示)を1~2回作成し、改善する。そして、そのアウトプットに手を加え、現実世界の知識やニュアンス、さらには芸術性やユーモアなど、もう少しの間は人間しか持たないものを追加するのだ。
"A Framework for Picking the Right Generative AI Project," HBR.org, March 29, 2023.






