2. 互いの認識が一致していることを強調して信頼を築く

 リーダーシップコンサルタントのジャック・ゼンガーとジョセフ・フォークマンは、リーダーシップ360度評価の結果数千件を分析し、人がどのような理由でリーダーを信頼するかを明らかにしました。その研究成果として、「良好な人間関係」「優れた判断力、専門性」「一貫性」の3つの要素を挙げています。

 この3つの要素のうち、あなたが上司との関わりの中で、うまく発揮できているものと、改善の余地があるものはどれか、振り返ってみましょう。ただ、自分の行動はなかなか自分では判断できませんので、あなたと上司のやり取りをいつも見ている同僚に、自分が関係改善のためにできることは何か、率直な意見を求めるとよいでしょう。

 メールの内容からすると、お二人の関係を向上させるチャンスはあるように思えます。信頼を築くために必要なことについては、HBRの別の古典的な論考があり、その中に、あなたの置かれた状況に関係すると思われる一節があります。「有能だが温かみに欠けると見なされた人は、人に羨望の感情を起こさせる場合が多いことが研究により示されている。この感情は、尊敬と恨みの両側面を持っている。尊敬の場合には、相手に協力したり、属したりしたくなるが、恨みの場合には、相手に強い報復行動を取る可能性がある」。言い換えれば、あなたの上司の恨みは、あなたを味方だと感じていないことから生じているとも考えられます。

 そこで、あなたが取るべき具体的な手段を2つ紹介します。

上司の優先課題を聞く

 上司が何に最も注力し、自分はどのようにその目標達成をサポートできるかを、明確に話し合う場を持ちましょう。たとえば「あなたにとっての成功とはどのようなものかを理解し、自分がそれに貢献できているかどうかを確認したいのです。いまあなたが取り組んでいる最も重要な仕事を、2つか3つ教えてください。私はどのようにサポートできるでしょうか」などと尋ねます。

連帯して勝利を目指す

 上司の優先課題がわかったら、共同で達成できることがないか考えましょう。あなたの専門知識が特に役立つプロジェクトはないか。彼女が特に得意とすることを、あなたが際立たせることはできないか。あなたが仕事を「共同作業」ととらえるようにすると、緊張を和らげることにつながるでしょう。主語をなるべく「私たち」にして話すようにします。そして成功したら、必ず栄光を分かち合いましょう。

3. 再び一対一で話し合う

 以前、彼女と直接話すことが効果的だったという事実は、彼女が耳を傾け、変わることができるかもしれないという期待を抱かせるものです。これまでの2回の会話を振り返ってください。その話し合いでは、何が効果的だったでしょうか。彼女はどのようなことに安心したでしょうか。また、あなたが言ったことにネガティブな反応を示したことはなかったでしょうか。

 あなたは「彼女に反論した」と書いていますが、次の会話には協調的なスタンスで臨むとよいでしょう。たとえば「私たちが協調して仕事をすることが大切だと思うのですが、必ずしもうまくいっていないように感じます。その責任は自分にもあると思います。関係改善のために、私にできることは何でしょうか」などと質問します。そこで何かフィードバックを得られたら、注意深く聞き、お礼を言います。彼女の提案すべてには同意できないかもしれませんが、自分から改善し、アプローチを変えようとする姿勢を示すことで、彼女も同じことをしてくれる可能性が高まります。

 ここで、リーダーシップ研究教育機関CCL(Center for Creative Leadership)が開発したフィードバックの「SBIモデル」を紹介しましょう。彼女があなたとの話を一方的に切り上げることについて話し合う際に役立つと思います。次のように実践します。

・その行動がいつ、どこで起こったか、状況を述べます。「同僚の前でプロジェクトについて議論していた時に」

・次に、観察した内容、つまり行動をできるだけ具体的かつ中立的に説明します。「あなたは、確認のために私の話を遮って説明を求めましたが、私が話し終える前に立ち去ったので」

・その行動の結果、影響を言葉にします。「私の意見に興味がないのだと思いました。また、本意ではなかったと思いますが、人前で発言をさえぎられたため、恥ずかしい思いをしました」

 最後にもう一つ、彼女があなたをおとしめる行為について、目に余ると感じた事例を記録しているのはよいことです。特に、上司が実害を及ぼしていることを上層部に訴える場合には、記録があると便利です。可能な限りすべての行為について、時間、場所、どのような言動が誰によって取られ、その場に誰が同席していたかを記録してください。

 また、上司の行動だけを記録するのではなく、それに対するあなたの言動も記録します。行動に一定のパターンが見られ、あなた(や他の人)がすでに対策を講じたと知れば、上層部が動く可能性が高くなります。ただし、上記の提案がうまくいくとは限りませんので、うまくいかなかった場合の備えもしておきたいものです。

 あなたの功績も記録しておき、同僚やあなたとの間の緊張関係によって、その功績が損なわれることがないようにしましょう。あなたが取り組んでいる仕事や、あなたが持ち込んだアイデアや提案を、常に最新のリストにまとめておきます。どちらのリストも使う必要がないことを祈りますが、自分のキャリアは自分で守るつもりでいたほうがよいでしょう。

 繰り返しになりますが、関係を改善する責任は、すべてあなたにあるわけではありません。むしろ、本来の責任は、態度を改めるべき上司にあるといえるでしょう。しかし、それが見られないということですので、状況を少しでも生産的な方向へ向かわせられれば、と具体的な対策をお伝えしました。

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"Getting Along: My Boss Doesn't Trust Me," HBR.org, March 27, 2023.