直属の上司とうまくいかない時の対処法
Karen Moskowitz/Getty Images
サマリー:直属の上司との関係が良好でない時、どのように対処すべきか。関係を生産的な方向へ向かわせる3つのステップを紹介する。

直属の上司に信頼されていないと感じる

「ゲッティング・アロング」(Getting Along)は、職場のエキスパートであるエイミー・ギャロがよくあるやっかいな人間関係の問題に対して、折り合いよくやっていく、あるいは円滑な関係を築くためにアドバイスするコラムである。

エイミー様
 2022年、米国国防総省に上級技術管理職として採用されました。さまざまな機関を監督する仕事の経験があった私が、採用候補者の中で最も適任だったと言われました。
 ですが、働き始めた当初から、直属の上司とうまくいっていません。上司は、私が彼女を敵対視し、その地位を狙っていると思い込んでいるようなのです。私が他機関の担当者と話すことが「自分の面子を潰している」と、面と向かって非難されたこともあります。私は、自分の職務を果たすために必要な会話をしており、話している事実を隠すことなく、常に報告しています。私は、いまよりはるかに大きな組織で管理職をしていましたが、彼女がやろうとしているように、外部機関との調整を一手に引き受けるようなことはけっしてしませんでした。
 彼女はまた、私の立場を理解しているつもりになって、人前で私との会話を途中で切り上げ、イライラしたように立ち去るのです。このような状況は少なくとも6回あり、十分に深刻だと思いましたので、記録しています。2回は、二人きりの時に彼女に反論し、私が取っているコミュニケーションプロセスと、自分のどのような行いが信頼を失うきっかけになったのか困惑している、ということを冷静に説明しました。そうするとしばらくは効果があるようです。それでも私は、地雷を踏まないように、常に戦々恐々としています。
 私が彼女の立場を脅かす存在ではないことを理解してもらうには、具体的にどのような行動を取ればよいでしょうか。どうしたら信頼を築き、この先、大切なチームメンバーとして見てもらえるようになるでしょうか。

上司に対して慎重な振る舞いが求められている方へ

 この状況に対するあなたのご心配とご不満、お察しします。あなたの仕事のやり方を認めず、情報や人間関係を一人で抱え込み、あなたをおとしめさえする上司の下では、個人攻撃のように感じてしまいますね。

 あなたの悩みを本人に一対一で相談したことは賢明でしたし、そうした会話によって、一時的にでも事態が改善したことに希望を感じました。残念ではありますが、行動変容は難しいので、彼女がすぐに元の状態に戻ってしまったのは驚くことではありません。

 私が提案するアプローチは3つあります。1つ目は自分がライバルでないと示すこと、2つ目は信頼を築くこと、3つ目は上司に直接状況を話すことです。

 それぞれについて深く掘り下げていきましょう。

1. 脅威ではないことを控えめに示す

「自分より権力も権威もあるのに、なぜ脅威に感じるのか」。不安を抱える上司の下で働く人が理解に苦しむことの一つでしょう。自分の仕事や他人の目を気にするのは、力のない人がすることだと思うかもしれません。

 権力のある人が無能感を抱くと、他者に対して攻撃的になり、不必要に人の足を引っ張ったり、恨みを持ったりする傾向があることを、南カリフォルニア大学教授のナサニエル・ファストとカリフォルニア大学教授のセリーナ・チェンが一連の研究で明らかにしています。しかし、無能感だけで攻撃的になるわけではありません。実際、弱い立場の人が不安を感じても、同じようなマイナスの行動に出ることは通常ありません。

 リーダーが実際に感じている自信や能力と、役職に対する期待の大きさ(リーダーシップ能力、知識、情報へのアクセスなど)とが乖離していると、自尊心を守り、自分の行動を正当化しようとする、いわゆる「自我防衛」の行動を取るようになります。

 上司のエゴを鎮めることなど、特に自分をおとしめている上司に対して一番したくないことかもしれませんが、それでストレスが減り、戦々恐々と過ごすことがなくなるのなら、安いものです。

 上司には、自分のことをライバルではなく、味方として見てもらいたいですね。最初からそうあるのがベストですが、関係性をリセットするのに遅すぎるということはありません。面談の際に「あなたの仕事ぶりを尊敬していますし、これからもあなたから学びたいと思っています」などのように言ってみてください。無能感を抱いている管理職には、誠実なお世辞が効果的であることが研究でわかっています。「誠実な」という言葉に注意してください。口先だけの褒め言葉はすぐに見抜かれるものです。

 おべっかを使っているように思われるのが心配であれば、ほめる代わりに、彼女が自分にしてくれたことに感謝の気持ちを表してもよいのです。前述のファストの研究によれば、部下の「ありがとうございます」という言葉は、不安な上司による部下のパフォーマン評価にプラスの影響を与えるそうです。注目のプロジェクトに携わる機会を与えてくれたことや、他部門の人を紹介してくれたことなどへの感謝を伝えてみましょう。それによって、彼女を安心させるだけでなく、彼女自身の長所に気づかせることにもなり、彼女が自信をつけることにつながるかもしれません。

 一つだけ注意を促すと、不安な上司の下で仕事をしていると、自分自身の競争心に火が点くことがあります。しかし、仕返しは最も行ってはいけないことの一つです。もし上司があなたを信頼できないとか、あなたに軽蔑されていると感じたら、ますますガードを固めるでしょう。

 また、彼女に対して共感を持つことも効果的です。彼女は、以前の職場で本当にポストを狙われていたり、直属の部下にないがしろにされていたのかもしれません。また、あなたが以前、彼女と同じような立場にあり、チームを率いる大変さを知っていることが彼女を不安にさせている可能性もあります。彼女には、いまの行動を取るもっともな理由がある、と考えれば、彼女に対するスタンスもおのずと和らぐのではないでしょうか。

 断っておきますが、私はけっして彼女の行動を弁解したり、あなたに目をつぶるように勧めているのではありません。理想を言えば、彼女が自分の及ぼしている影響に気づき、それを改善する手立てを講じてくれればよいのですが、彼女がそうする保証はありませんので、あなた自身の考え方を変えて、違った角度から状況に対処しましょう。