1. 永遠ではないことを最初から認識する

 キャリアアクセラレーターという立場は、従業員が他社でチャンスを得る「足がかり」としての義務を負っている。このトレードオフはシンプルだ。あなたは従業員が卓越した成績を上げることを期待する。その代わりに従業員は、退職の準備をする時には正直に伝えなければならないことを理解する。突然消えたり、突然辞表を提出したりはしない。そして、あなたは従業員が安心して正直になれる環境をつくる。

 マッキンゼーの最高人材責任者のケイティ・ジョージが「スキルを伸ばすか、辞めるか」と表現したように、同社は人材に多額の投資を行っている。教育をベースとしたアップ・アンド・アウトが評判を呼び、マッキンゼーのアルムナイが履歴書を提出すれば、グーグルやアップルなどの誰もが憧れる企業も真剣に検討する。

 研修、指導、実習には、情熱とリソースも投入しなければならない。実際に役立つライフスキルやすぐに実践できる具体的な教えを与えるのだ。また、価値を素早く引き出すために必要なツールを提供し、そして何よりも長期にわたって忘れることのない価値ある学習体験を提供すべきである。さらに人々が退職した後も、資産やリソース、ナレッジライブラリーを利用できるようにする。これも、価値とサポートに基づく評判を構築する方法の一つだ。

 研修が、社内で現在の職務を遂行するのに必要なスキルを学ぶだけでなく、どこにいても将来成功するために必要なツール、スキル、能力を含むものであれば、この目的を達成することができる。

 忘れてはならないのは、相互に対等な立場であるという考え方が強い人間関係を築き、知識を与えられる点だ。こうしたプログラムへの投資は、転職後にも同僚間の結び付きを積極的に強化する。

2. 社内候補者やブーメラン社員の登用に力を入れる

 アップ・アンド・アウトの考え方を持つキャリアアクセラレーターとして、社内で継続的に従業員を昇進、あるいは異動させなければならない。あなたの職場で2年、3年あるいは4年以上働きたいと思う人材もいるはずだ。しかし、流動性を提供しなければ、そうした人材は定着しない。

 優秀であるための土台を築くには、優れた仕事の評価にあなたが真剣に取り組んでいることを証明しなければならない。そのためには、可能な限り社内の人材を昇進させるか、場合によってはスキルや資格を高め、ネットワークを広げた元従業員や退職したことを後悔している元従業員を再雇用することも必要だ。

 社内の人材の流動性が活発であるほど、新入社員は長期的なキャリアの成功やサポートの足がかりとして、会社のエンプロイヤーブランドを認識するようになる。

 多くの組織では、野心的なマネジャーが優秀な人材を確保しようとする傾向があり、不用意に引き止めることがある。しかし、これは進歩の妨げになり、阻止すべきだ。この悪習を効果的に終わらせるために、年間に何人の人材を育成し、昇進させたかによって、マネジャーの価値を公に評価すればよい。そうすれば、すべての人の目標との整合性が取りやすくなる。

 戦術的なレベルでは、社内の求人は明確でアクセスしやすいものでなければならない。社内からの応募は優先させる必要がある。また、他のチームを選んで既存のチームを離れたいと志願することを、前向きな行動として称え、推奨することで、それに伴う気まずさを文化的なレベルでなくさなければならない。

 社内の流動性が奨励され、人事考課や頻繁に行われるレビューで定期的に議論されるようになれば、自然と社内異動が増え、より予測しやすい方法で外部の競争相手への人材流出を軽減することができる。

 最終的には、人材流出に対する社内の流動性の高まりを追跡することで、この新しい、より予測可能な内部フローの価値を容易に測定できる。